ウスベニキントキ(読み)うすべにきんとき(英語表記)whitefin bigeye

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウスベニキントキ」の意味・わかりやすい解説

ウスベニキントキ
うすべにきんとき / 薄紅金時
whitefin bigeye
[学] Priacanthus fitchi

硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。土佐湾、宮崎県日南(にちなん)市付近の太平洋沿岸、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、東シナ海、フィリピン諸島、スマトラ島、オーストラリア西岸など西太平洋とインド洋に分布する。体は長楕円(だえん)形でよく側扁(そくへん)する。体高は低くて体長の29~35%。尾柄(びへい)はきわめて細い。目は大きく、体長の14~17%。口は大きく、著しく斜位で、下顎(かがく)前端は上顎よりも突出する。上顎の後端は目の前縁下に達する。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも同様の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)は後縁と下縁に弱い鋸歯(きょし)があり、隅角(ぐうかく)部に三角形で扁平(へんぺい)な棘(きょく)が1本あり、間鰓蓋骨の後縁付近に達する。間鰓蓋骨の後縁に欠刻(切れ込み)がない。鰓耙(さいは)は上枝に4~5本、下枝に16~18本が並ぶ。頭部と体は小さくてはがれにくい櫛鱗(しつりん)で覆われ、側線有孔鱗数は64~70枚。背びれは10棘12~13軟条で、棘部と軟条部の間に欠刻がない。臀(しり)びれは3棘13~14軟条。背びれと臀びれの軟条部は高くならない。腹びれはおよそ頭長大またはそれ以下で、その先端は臀びれ起部に達しない。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)。体色は赤桃色で、腹面は銀白色。目の虹彩(こうさい)は赤い。背びれ、臀びれおよび尾びれ全体は淡い赤色~淡色で、斑紋(はんもん)がない。胸びれはやや黄色味を帯びた淡色。腹びれの鰭膜(きまく)は黒褐色で、斑紋がない。水深135~400メートルの深所に生息する種で、底引網で漁獲されるが、宮崎県では水深50メートル以浅の大形の定置網で捕獲されたことがある。最大体長は24センチメートルほどにしかならない小形種。

 体高や尾柄高が低いことでキントキダイによく似るが、本種は体高が頭部の後方で最大になること、背びれと臀びれに黄色斑点がないことなどで区別できる。

[尼岡邦夫 2021年8月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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