日本大百科全書(ニッポニカ) 「エドワード(3世)」の意味・わかりやすい解説
エドワード(3世)
えどわーど
Edward Ⅲ
(1312―1377)
プランタジネット朝のイギリス王(在位1327~77)。エドワード2世の長男。父王の廃位後即位。初め母后イサベラとその寵臣(ちょうしん)モーティマーRoger (Ⅲ)de Mortimer(1286/87―1330)が実権を握ったが、1330年ごろから親政。32年にスコットランド軍を破ってイギリスの主権を主張した。その後、ガスコーニュ領有やフランドル支配を行い、カペー朝フィリップ4世の孫としてフランス王位継承権を主張してフランスと争い、百年戦争を始めた。戦闘は39年から始まったが、40年スロイスの戦い、46年クレシーの戦い、56年ポアチエの戦いに勝利を得た。48年ごろにはガーター勲位制を設けたりしたが、戦果はあがらず、フランス王位継承権を放棄してアキテーヌ領有を確保したのみであった。
戦争によって国家主義の気運が高まり、53年の教皇尊信罪法のような反教会主義的風潮を生み、トン税、ポンド税などの課税が発達して、議会庶民院の課税同意権も発展したが、48~49年の黒死病(ペスト)は、封建領主制の危機を助長し、巡回裁判制や治安判事制による治安取締りも厳しくされた。その後、王は政治に無関心となり、76年皇太子の死によって戦況も悪化し、王の四男ジョン・オブ・ゴーント公の専制を許した。
[富沢霊岸]