エビジャコ(読み)えびじゃこ

改訂新版 世界大百科事典 「エビジャコ」の意味・わかりやすい解説

エビジャコ (蝦雑魚)
Crangon affinis

甲殻綱エビジャコ科のエビで,内湾の砂泥底にすむ。体長4.5cm。体はとくに頭胸甲が平らである。第1,2胸脚がはさみを形成しているが,第1胸脚は独特な鎌状,第2胸脚は著しく細い。褐色ないし黒褐色であるが,環境によって容易に体色を変えることができる。産卵期は11~7月で,2月下旬から4月下旬が盛期である。生活史には長期世代(夏世代)と短期世代(冬世代)がある。長期世代は2月下旬から4月下旬に産卵されたもので,10月中旬までに中型エビに成長し,その一部が産卵するが,翌年2月上旬まで急速に成長して大型エビになり,産卵,死亡する寿命1年の群れである。中型エビが秋に産卵したものが翌年の4月中旬までに中型エビに成長し,4月下旬から7月にかけて産卵,死亡する半年余の寿命をもつものが短期世代である。日本各地から韓国,中国沿岸に多産し,中型,大型ともにつくだ煮として利用。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エビジャコ」の意味・わかりやすい解説

エビジャコ
Crangon affinis

軟甲綱十脚目エビジャコ科 Crangonidaeの小型エビ。体長約 4.5cmで,体の前半部はかなり扁平。黒褐色の色素胞が無数にあり,環境に敏感に反応して濃淡模様を変化させる。中国と日本の内海,内湾の浅海に多産し,冬は沖合いのやや深いところに移動する。エビジャコ科は第1胸脚が不完全な鋏脚となっており,可動指が鎌状である。浅海から水深 400mほどにかけて近縁種が多いが,いずれも小型である。本種はほかのエビ類と混獲され,佃煮や釣りのまき餌に使われる。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エビジャコ」の意味・わかりやすい解説

エビジャコ
えびじゃこ / 蝦雑魚
[学] Crangon affinis

節足動物門甲殻綱十脚目エビジャコ科に属するエビ。内湾浅海性で、本州北部から九州までの各地、朝鮮半島、中国北部に分布する。体長約5センチメートルで、背腹は扁平(へんぺい)。額角(がっかく)は短く、眼柄(がんぺい)の先端に達しない。第1胸脚は不完全なはさみで、可動指が鎌(かま)形。第2胸脚は著しく細くてはさみをもち、腕節が多数の節に分かれている。褐色あるいは黒褐色であるが、環境にあわせて体色を変化させることができる。生活史には長短2世代がある。長期世代は2月下旬から4月下旬に産卵された寿命1年の群、短期世代は長期世代の一部のものが秋に産卵したもので、半年余の寿命の群である。佃煮(つくだに)や釣りの撒餌(まきえ)に利用される。

武田正倫]


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百科事典マイペディア 「エビジャコ」の意味・わかりやすい解説

エビジャコ

甲殻類エビジャコ科のエビ。体は側扁して褐色〜黒褐色。はさみの形に特色があり,先端の可動指は掌部の外端から直角に出て鎌形触角割合に短く,体長は4.5cmぐらい。日本全国,韓国,中国沿岸の内湾浅海の砂泥底にすみ,食用。近似種が多い。

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