ドイツの作家ケストナーの少年小説。1928年発表。児童文学作品の処女作。小都市ノイシュタットに母と2人で住む少年エミールは、休暇を利用してベルリンのおばあさんにお金を届けに行く。汽車の中で居眠りしているうち、同室の男に、ピンでポケットに留めておいた紙幣を盗まれる。ベルリンに着いたエミールは、多くの少年少女の助けを得て泥棒を追い詰め、紙幣にあいていたピンの穴を証拠に、みごと犯人を捕らえる。その男は銀行破りだった。ユーモア、子供の心理と生活への理解と洞察、サスペンスの盛り上げ、快調なテンポなど、作者の優れた特質は、すでに遺憾なく、この処女作に発揮されている。続編『エミールと三人のふたご』もあり、その後の一連の作品によってケストナーは児童文学作家としても名声を得た。
[関 楠生]
『高橋健二訳『ケストナー少年文学全集1 エーミールと探偵たち』(1962・岩波書店)』
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