エレミヤ(英語表記)Jeremiah

翻訳|Jeremiah

デジタル大辞泉 「エレミヤ」の意味・読み・例文・類語

エレミヤ(Jeremiah)

前7世紀のイスラエル預言者。前627年から約40年間、ユダヤ王国の滅亡、神との新しい契約救済預言をし、国民の悔い改めを説いた。エジプトで死去。旧約聖書の「エレミヤ書」は、その預言集。イルメヤ

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精選版 日本国語大辞典 「エレミヤ」の意味・読み・例文・類語

エレミヤ

(Jeremiah) 紀元前七世紀頃のイスラエル王国の預言者。民族危機に当たり、背信の民に熱烈な悔い改めを説いた。

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改訂新版 世界大百科事典 「エレミヤ」の意味・わかりやすい解説

エレミヤ
Jeremiah

古代イスラエルの代表的預言者の一人。その預言の多くは詩型をとり,《エレミヤ書》に残されている。ヘブライ語ではイルメヤフーまたはイルメヤ(〈ヤハウェ,高めたまわんことを〉の意)。前650年ころ,ユダ王国の首都エルサレムの近郊アナトテのレビ人祭司の子として生まれ育ち,モーセ以来の宗教的伝統に親しんだと思われる。当時ユダ王国はオリエントの最強国アッシリアの属国として政治的にも宗教的にもモーセ宗教的伝統と相反する在り方をし,カナン的豊穣宗教の体系を受容し,あるいはこれと伝統的ヤハウェ宗教とを習合させた。エレミヤは前626年に預言者として使命に目覚めたとされるが,それはアッシリアの崩壊,メディア・新バビロニアの勃興,スキタイ族のパレスティナ来襲という世界の大変動期と一致する。この期をとらえ,ユダ王国ではヨシヤ王の一党が民族主義的復古運動をくりひろげ,《申命記》的宗教改革運動が推進されたが,エレミヤは深く民族の底にある背きの罪を自覚し,それを神の動かぬ審(さば)きの意思として語った。この預言は,前597年のバビロニアによる第1回捕囚に及び,神の世界史的規模における歴史支配と審判として明確に把握されたが,これは彼を迫害と危険と苦痛と孤独に陥れた。前586年第2回捕囚直前,審きから救いへの神の意思の変更を受けとめ(《エレミヤ書》32章),新しい契約(同31:31~33)へと結晶した。その後エジプト逃亡の一団によってエジプトへ連れ去られ,まもなく死んだとされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エレミヤ」の意味・わかりやすい解説

エレミヤ
えれみや
Jeremiah

『旧約聖書』の大預言者の一人。ユダ王国末期のヨシヤ王治世下の紀元前627年に預言活動を開始した。当時はアッシリア帝国の衰退期で、新バビロニア王国をつくったナボポラサルとメディア王国の建設者キャクサレスは協力して、前612年アッシリアの都ニネベを倒している。エレミヤは宗教的な動機から、この時期に、約100年前アッシリアに滅ぼされた北イスラエルの回復をはじめ、全イスラエル民族の復興を目ざした。前622年に始まったヨシヤ王の宗教改革にも当初賛成したが、やがて改革が外面的で民族主義的に堕するのをみて批判し、神殿と祖国破滅を預言した。そして新バビロニア王国の支配に対抗することを無意味と考えたが、ユダの王たちはエジプトの指図のもとにこれと戦って前587年滅亡した。また彼は、祖国が一度神の審判を受けねばならないと確信したが、バビロン捕囚の体験を乗り越えてユダ王国の人々が生き抜く道を示した。

[木田献一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エレミヤ」の意味・わかりやすい解説

エレミヤ
Yirmeyāhū; Jeremiah

旧約聖書中の大預言者。エルサレムの人。ベニヤミンの地アナトテの祭司ヒルキヤの子。ヨシュア王の 13年 (前 626) ,預言者として召され,ゼデキヤの 11年まで約 41年間にわたり活躍した。宗教がいたずらに形式的に中央集権化し儀式化していくのをみて,心情における人格的個人的な関係こそが宗教の本質であると説いた。南王国ユダの最後の証人となった。エレミヤの詩的感性は繊細にして情熱的で,『エレミヤの哀歌』は古代のすぐれた抒情詩の一つ。その預言は災厄への警告が主であったが,災厄を通じて神と新しき永遠の契約を結ぶことが考えられており,この思想はのちイエスにより取上げられた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「エレミヤ」の解説

エレミヤ
Jeremiah

前7世紀後半~前6世紀前半のユダ王国預言者。富者や強者の不義を非難し,神罰であるカルデア(新バビロニア)の支配を甘受せよと説いた。ユダ王国滅亡後のバビロン捕囚は危うく免れたが,その後,同胞の要求に抗しきれず,エジプトに移住した。彼の預言を収録したのが旧約聖書の「エレミヤ書」である。

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世界大百科事典(旧版)内のエレミヤの言及

【エレミヤ哀歌】より

…旧約聖書中の一書。ギリシア語訳(《七十人訳聖書》)以来,《エレミヤ哀歌》と呼ばれ,《エレミヤ書》の後に置かれるようになったが,ヘブライ語聖書では,ただ《哀歌》と呼ばれ,旧約聖書の第3部に置かれている。《哀歌》がエレミヤと結びつけられたのは,《歴代志》下35章25節の記事によるものと思われる。…

【預言者】より

…〈言葉の預言者〉において預言は神と民の間を審判の言葉,救済の言葉をもって引き裂き,また引き裂くことによって新たに結びつけようとしたものといえる。アモスに続くホセア,イザヤ,エレミヤなどの前8~前7世紀の預言者の活動の中心をわれわれはその点に見たい。王国の滅亡後に活動したエゼキエルや第2イザヤといわれる預言者(《イザヤ書》40~55)では預言の性格はかなり変わり,前者には祭司的要素が強く,後者には文筆家の面が強い。…

※「エレミヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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