オストロフスキー(Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy)(読み)おすとろふすきー(英語表記)Александр Николаевич Островский/Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

オストロフスキー(Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy)
おすとろふすきー
Александр Николаевич Островский/Aleksandr Nikolaevich Ostrovskiy
(1823―1886)

ロシアの劇作家。モスクワ大学法科を中退し、裁判所の役人となったが、演劇への情熱を断ちがたく、ついに劇作に没頭、生涯47編の戯曲を書き、ほかに翻訳と合作の脚本がある。処女作『内輪のことだ、勘定はあとで』(1850)をはじめ『雷雨』(1859)、『熱き心』(1868)、『最後のほどこし』(1877)は地主、商人社会の内面を暴き、彼らの偽善と貪欲(どんよく)、無知と横暴打算と悪徳を、『森林』(1871)、『才能とひいき客』(1881)や『罪なき罪人』(1883)は、人々に喜びを与えようとするけなげな志をもちながら、非情な社会の荒波に押し流されてゆく、哀れな地方の役者の生活を描いた代表作。さらに『雪娘』(1873)を頂点とする詩情豊かなロシアの伝説や歴史に取材した一連の作品がある。これらに一貫する作劇法の特色は、曲折に富む筋立てのおもしろさ、登場人物の鮮やかな形象と性格、彼らの明快な言動である。オストロフスキーほど簡潔で的確、しかも陰影と表現に富む舞台のことばを駆使し、ロシア社会のあらゆる階層の生活と情景を生き生きと再現した作家はまれであり、「ロシア国民演劇の父」の名にふさわしい。また演出者、教育家としても活躍、当時の保守的な帝室マールイ劇場の改革のために闘い、晩年はその演劇学校長を兼務。同劇場は「オストロフスキーの家」ともよばれ、彼の作品のほとんどすべてを上演してきた。

[野崎韶夫 2016年1月19日]

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