オスミウム

精選版 日本国語大辞典 「オスミウム」の意味・読み・例文・類語

オスミウム

〘名〙 (osmium) 白金族元素の一つ。記号 Os 原子番号七六。原子量一九〇・二。青灰色の固体、または青黒色粉末。白金鉱中にイリジウムとの合金イリドスミンとして産出。一八〇四年、イギリス人テナントが発見。物質中最大の密度をもち、硬く、融点もタングステンの次に高いが、もろい。酸化されやすく、四酸化オスミウムの蒸気は有毒。合金材料、触媒などに用いられる。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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デジタル大辞泉 「オスミウム」の意味・読み・例文・類語

オスミウム(osmium)

白金族元素の一。青灰色の硬い金属。比重は物質中最大の22.5。合金として電気接点材料・ペン先などに使用元素記号 Os 原子番号76。原子量190.2。

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化学辞典 第2版 「オスミウム」の解説

オスミウム
オスミウム
osmium

Os.原子番号76の元素.電子配置[Xe]4f 145d66s2の周期表8族(白金族)貴金属元素.元素名は揮発性の酸化物が刺激臭をもつためギリシア語の“臭”を意味するοσμη(osmè)から命名された.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で阿斯繆母(ヲスミュム)としている.1803年イギリスのS. Tennantが白金鉱中に発見した.原子量190.23(3).質量数184(0.02(1)%),186(1.59(3)%),187(1.96(2)%),188(13.24(8)%),189(16.15(5)%),190(26.26(2)%),192(40.78(19)%)の7種の安定同位体と,質量数162~197,199の放射性同位体が知られている.
天然には,白金鉱中にイリジウムとの合金として産出する.矩周期型の昔の周期表では,Os,Ir,PtはⅧ族で性質は類似するため,相互分離は困難である.金属は酸化物を水素で還元すると得られる.オスミウム触媒は担体にオスミウム塩を吸着させ還元すると得られる.加工が困難で,普通は焼結して利用する.融点3054 ℃,沸点5027 ℃,第一イオン化エネルギー8.28 eV.密度22.59 g cm-3(20 ℃)で,物質中最大の密度をもつ.モース硬さ7.5.通常の酸化数は2(d6),3(d5)であるが,1を除いて0から8の化合物が知られている.白金族元素のなかでもっとも酸化されやすく,高温ではフッ素,塩素とも反応する.一酸化炭素と反応してOs0 (CO)5からOs8(CO)23までのカルボニル化合物を生じる.熱濃硫酸,濃硝酸次亜塩素酸ナトリウム,融解硫酸水素アルカリに可溶.融点の高いことを利用してフィラメントに,耐食性,耐摩耗性を利用してペン先に用いる.水素添加アンモニア合成(ハーバー-ボッシュ法)にも当初は触媒として用いられた.OsO4オレフィン酸化触媒として使われる.[CAS 7440-04-2]

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改訂新版 世界大百科事典 「オスミウム」の意味・わかりやすい解説

オスミウム
osmium

周期表第Ⅷ族に属する白金族元素の一つ。1804年イギリスのテナントS.Tennantにより白金鉱から発見され,酸化物が強い刺激臭を放つことから,ギリシア語のosmē(におい)にちなんで命名された。白金鉱中にイリジウムと合金イリドスミンをつくって存在する。地殻中の存在度は3×10⁻3ppm。希元素の一つ。

灰青色のひじょうにかたい金属(モース硬度7.5)で,融点が白金族中で最も高い。無機酸には100℃以下では侵されないが,アルカリ性の酸化剤(NaOH+Na2O2,KClO3など)に融解する。酸素と反応しやすく,粉末は常温でも徐々に反応して,刺激臭の強い酸化オスミウム(Ⅷ)OsO4を生成し,これが揮発する(きわめて有毒)。塊状のものは加熱によって酸化される(200~400℃)。フッ素,塩素,硫黄とも直接反応する。

銅やニッケルを鉱石から取り出す際の副生物から,他の白金族とともに得られる。融点が高く,かたくて酸に強いなどの性質が利用され,電気接点材料,フィラメント,ペン先などに使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オスミウム」の意味・わかりやすい解説

オスミウム
おすみうむ
osmium

周期表第8族に属し、白金族元素の一つ。1804年イギリスのテナントによって発見された。発見のもととなった酸化オスミウム(Ⅷ)OsO4の蒸気が刺激臭を有することから、臭気を意味するギリシア語のosmeにちなんで命名された。白金鉱の中に主としてイリジウムの合金、すなわちイリドスミンとして産出する。融解物から固化させたものは青灰色の結晶で、その比重は物質中最高である。融点も全元素中でタングステンに次いで高い。硬さは水晶と同程度(モース硬度7.0)で、白金族元素中最高であるが、一方、もろくて、砕いて容易に粉末にすることができる。酸化物を還元してつくったものは青黒色微粉末で、比重もいくぶん小さい。一般に熱濃硫酸、濃硝酸には溶けるが、王水には溶けにくい。酸素が共存すれば塩酸にも溶ける。

 酸素と結合する傾向は白金族中でもっとも強く、海綿状のものは空気中に放置しただけで白熱する。塊状のものでも200~400℃で酸化し始める。酸化生成物は酸化オスミウム(Ⅷ)である。これはきわめて有毒な気体で、粘膜、肺、目などを刺激し、失明の危険があるから、酸化物そのものはもちろん、金属オスミウムの取扱いにも十分の注意が必要である。この酸化物は有機物で還元され酸化オスミウム(Ⅳ)となる。オスミウムは0から+8まで各種の酸化数をとりうるが、+4の化合物がもっとも多く、6配位の錯体が多数知られている。

 用途としては、ルテニウムやロジウムなど他の白金族元素との合金が主要なものである。融点が高く、硬いので電気接点材料に、また耐摩耗性、耐食性があるのでペン先、ピボットなどに使用される。

[鳥居泰男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オスミウム」の意味・わかりやすい解説

オスミウム
osmium

元素記号 Os ,原子番号 76,原子量 190.23。天然の安定同位体には,オスミウム 192 (存在比 41.0%) のほか6核種が知られている。周期表8族,鉄族元素の1つ。 1804年 S.テナントにより発見された。白金の鉱石であるオスミリジウム中に含まれる。単体は青白色の光沢ある金属。融点 2700℃。比重 22.48で,物質中最大の比重をもつ。空気中では安定であるが,粉末は常温でも徐々に酸化される。熱濃硫酸,王水,濃硝酸と反応し溶ける。リン,硫黄の蒸気中で燃焼する。2,3,4,6,8価として多様な化合物をつくり,また錯塩をつくりやすい。イリジウムとの合金はペン先や精密ベアリングに使われ,またアンモニア合成用触媒,有機化合物の水素化触媒として使われる。

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百科事典マイペディア 「オスミウム」の意味・わかりやすい解説

オスミウム

元素記号Os。原子番号76,原子量190.23。融点3045℃,沸点約5012℃。白金属元素の一つ。1804年S.テナントが発見。青灰色の金属。物質中最大の密度をもち,白金属中最もかたい(硬度7.5)。酸化されやすく,粉末では室温でもOsO4を生ずる。電気接点,フィラメント,ペン先,触媒などに使用。白金鉱中にイリドスミンとして産出。

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