オダマキ(英語表記)Aquilegia flabellata Sieb.et Zucc.

改訂新版 世界大百科事典 「オダマキ」の意味・わかりやすい解説

オダマキ
Aquilegia flabellata Sieb.et Zucc.

日本で古くから庭に植えられるキンポウゲ科多年草。オダマキの名は,その花容が苧環(おだまき),すなわち紡ぎ糸を巻く糸巻きの形に似るところから名づけられた。オダマキ属Aquilegiaの英名columbineはハト(鳩)の意で,その花容をハトが飛ぶ姿に見立てたものであろう。根茎は直立分岐し,根生葉を叢生(そうせい)する。根生葉は越冬し,2回3出複葉,小葉身は浅裂するが鋸歯はない。裏面は白色を帯びる。葉柄の基部は鞘(さや)状。茎は高さ20~30cm,ゆるく分岐し,5月ごろ先に1~5個の花をうつむきにつける。花は直径4cmくらい。萼片は5枚,花弁状で青紫色。花弁は5枚,萼片と互生し,基部に長くて先が内曲した距があり,萼片の間よりつき出る。上部は黄色,距を含めて下部は青紫色。まれに白花のものがある。おしべはだいたい10本ずつ4~5輪にならぶ。内部のものは葯を失って鱗片状の仮雄蕊(かゆうずい)となる。めしべは5本。果実は袋果の集りで,黒色で光沢のある多数の種子を入れる。変種ミヤマオダマキvar.pumila Kudoは南千島,北海道,本州,サハリン,北朝鮮の高山帯に生え,茎は高さ10~25cm,花茎は分岐せず1個の花をつける。オダマキの原種と考えられている。オダマキ属は約70種が北半球に広く分布しており,日本には2種がある。ヤマオダマキA.buergeriana Miq.は花はやや小さく,萼片は紫褐色,ときに黄色で,袋果に細い枯毛がある。

オダマキ以外にヨーロッパ原産で園芸的に多く栽培されるセイヨウオダマキA.vulgaris L.,日本原産で高山性の小型種で観賞用として鉢栽培されるミヤマオダマキ,日本の原産で山地に多く野生し,淡褐紫色花を咲かせるヤマオダマキとその変種,淡黄色花のキバナヤマオダマキなどがある。またオダマキ属の種間交配は容易なため,多くの交配品種が育成されている。最近,セイヨウオダマキの名で栽培されている距の長い種類は北アメリカ原産のアキレジア・ロンギシマ種A.longissima A.Grayの改良種である。オダマキ類はじょうぶな耐寒性宿根草で,半陰地でもよく育つ。通常,種子を春または秋まきして栽培し,株分けでも増殖できる。植物体には青酸化合物を含有し有毒とされるが,ヨーロッパや中国民間薬として利用される。花言葉は〈愚鈍〉。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オダマキ」の意味・わかりやすい解説

オダマキ
おだまき / 苧環
[学] Aquilegia flabellata Sieb. et Zucc. var. flabellata

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。日本原産種。茎は高さ20~50センチメートル、平滑な円柱で直立し、よく分枝する。根出葉は長い柄をもつ3出複葉で、小葉は短い柄をもち深く3裂する。5月、茎頂に径3~4センチメートルの青紫、淡紫、まれに白色花を数花、下向きにつける。茎、葉ともに特有の白粉で覆われた緑色。萼(がく)、花弁ともに5枚。オダマキの名は、花の形が、紡いだ麻糸を中をからにして丸く巻いた苧環(おだまき)、または苧玉(おだま)に似ていることからつけられたが、花弁のようにみえるのが卵形の萼で、花弁は長楕円(ちょうだえん)形で上部は白に近い淡黄色、基部は距(きょ)となって内側に曲がる。雌しべは5本、雄しべは多数。庭園用、鉢植えのほか切り花用として栽培される。本州中部地方以北の高冷地、北海道に自生する変種のミヤマオダマキ(深山苧環)var. pumila Kudoから、本種がつくられたと考えられている。日本にはほかにヤマオダマキが自生する。寒地はもとより暖地でも栽培は容易で、冬越しより夏の暑さに注意し、適湿を保ち、半日陰または西日の早く落ちる所がよい。繁殖は春の株分けのほか実生(みしょう)もできるが、秋播(ま)きでは翌年開花しない。最近切り花や花壇用につくられるセイヨウオダマキは、一般にアクイレギアとよばれ、花色が豊富で、高性から矮性(わいせい)種まであり、よく栽培される。12月から翌年の1月に温室で育て、早春に出荷できるので、営利栽培に有利な栽培種である。

[魚躬詔一 2020年3月18日]


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百科事典マイペディア 「オダマキ」の意味・わかりやすい解説

オダマキ

日本で古くから観賞用に栽培されるキンポウゲ科の多年草。おそらく北海道,本州中北部の高山に自生する矮(わい)性のミヤマオダマキを育成したものといわれる。葉は3出葉で,小葉は3深裂し,粉白色を帯びる。5月ころ,30〜40cmの花茎に萼片,花弁各5枚の青紫色の花をつける。花は径約4cm,花弁には長い先の曲がった距があり,萼片の間から後につき出る。繁殖は株分けか実生(みしょう)による。名は,花の形を紡いだ麻糸を巻く苧環の形になぞらえていう。花壇,鉢植にされるヨーロッパ原産のセイヨウオダマキは,全体に大きく,特に花つきがよい。花色は紫のほか,白,黄,赤など変化が多い。
→関連項目ヤマオダマキ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オダマキ」の意味・わかりやすい解説

オダマキ
Aquilegia flabellata

キンポウゲ科の多年草で,鉢植や切り花用に栽培される。茎は高さ 20~40cm,葉は2回または3回3出複葉で,小葉はさらに2,3裂し,各裂片は扇形をなす。白粉を帯びた緑色である。5~6月頃,茎の上部に枝を出し鮮かな青紫色,ときには白色の美しい花をやや下向きにつける。萼片は5枚で花弁状になっている。花弁も5枚で基部は下方に伸長し,先が鉤状に曲って距となっている。本州中部以北の高山に生えるミヤマオダマキ (深山苧環)が原種とも考えられている。

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