精選版 日本国語大辞典 「オットー」の意味・読み・例文・類語
オットー
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ドイツの技術者。初めケルンで商業を営むが,1862年ころから蒸気機関に代わる小工場用の原動機としてガス機関の製作を志す。64年E.ランゲンとともにN.A.オットー商会を創設,66年にはフリーピストン機関の改良,製作に成功した。この機関は大気圧機関で,J.ルノアールのガス機関よりガス消費量が約1/3と少なく,67年パリ万国博覧会では金賞を受賞した。72年G.ダイムラーとW.マイバハを迎えドイツ・ガス原動機製作会社を設立,この機関の改良を続けたが,好成績を得るにいたらず,結局放棄する。代りに,ボー・ド・ロシャAlphonse Beau de Rochas(1815-93)の4サイクル機関の理論(1862特許)によって,内燃機関の開発に向かい,76年,現在,オットー・サイクルとして知られる4サイクル方式の内燃機関を製作,翌年には特許を得た。この機関は,爆音の激しかったルノアール機関に比べてはるかに静かであったところから,〈無音オットー〉と呼ばれ,78年のパリ万国博覧会でも評判を集めた。オットーの内燃機関の特許は,競争相手が多数異議申立てを行い,結局最終的には無効とされたが,内燃機関そのものの改良は進められ,1880年代初めには出力100馬力ものも市販され,当時産業用原動機として全盛の蒸気機関に代わって工場に進出し始めた。オットー機関は現代の内燃機関の理論と構造の原型となったものである。
執筆者:木本 忠昭
ドイツのプロテスタント神学者,宗教学者。ゲッティンゲン大学などを経て,マールブルク大学の組織神学教授。宗教の本質と真理を学問的に把握することを課題とし,人間の内的直感や予感を方法としてその解明に向かっていった。ルター,カント,シュライエルマハー,フリースJ.F.Fries,デ・ウェッテW.M.L.De Wetteの影響を受け,主著《聖なるもの》(1917)などで宗教を他の事物から説明せず,それ独自の事態として理解し,そこに〈聖なるもの〉〈ヌミノーゼNuminose的なもの〉の存在を認めた。聖なるものの言い尽くしがたさや神的なものの非合理的,神秘的側面を明らかにした点にその特徴がある。さらにそれを宗教史の中に跡づけ,キリスト教のほかにインド宗教の研究にも向かった。
執筆者:近藤 勝彦
ドイツの貴族バーベンベルク家出身の聖職者,歴史記述者。国王コンラート3世の異父弟,フリードリヒ1世の伯父。1138年いらいフライジング司教となり,シュタウフェン王家の国政に深くかかわる。43年から46年の間に大作《年代記》を書く。《二つの国の歴史》とも呼ばれ,アウグスティヌスの影響が顕著なこの歴史叙述は,混迷の現世的事象と神の国との対比を通じて展開される一つの普遍的救済史である。彼が晩年に書いたもう一つの歴史作品《フリードリヒ1世伝》はシュタウフェン家の前史とこの王の事績とを56年まで記述したもの。それは宮廷礼拝堂司祭ラーエウィンRahewinの手によって60年まで書き継がれた。
執筆者:山田 欣吾
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…中世前期には教会の全体像が薄れ,まず個々の民族,修道院,司教区等の年代史が作成されたが,11世紀以降の各種改革運動が教会全体の実態とあるべき姿とに対する関心を高めると,教会全体の年代史も作成された。フライジングのオットーは,アウグスティヌスの《神の国》に似た立場から《両国史》8巻を書き,中世的教会観からの脱皮を望む15~16世紀の人文主義者らは,種々の批判的教会史研究を著した。プロテスタントのフラキウス・イリュリクスMatthias Flacius Illyricus(1520‐75)は,これをさらに進めて,古代教会の伝統を継承しているのがルター派であることを立証する著作に努めた。…
…旧約聖書《創世記》から論じ起こし,オリエント,ギリシア,ローマの諸文明を経由して,ヨーロッパ文明の成熟への道程を描いているが,神話的記述と,最近年についての現実的記述の段差が,ことに強い印象を与える。フライジングのオットーの《年代記》(《二つの国の歴史》ともいう。12世紀中葉)がよく知られている。…
…しかし,古代末期の知識人層は一般に地上のローマ帝国の永続を信じるローマ理念から脱却しきれず,ルティリウス・ナマティアヌスら異教徒にせよ,オロシウスらキリスト教徒にせよ,現今の老齢化が死に至るものであるとは予知せず,なお帝国の若返りを信じていた。
[中世から近代へ]
中世においては,フライジングのオットーが《ダニエル書》の四世界帝国説に従って歴史叙述を行い,西ローマ帝国滅亡に神の審判をみて地上の権力のはかなさを説いたが,同時に彼は476年は狭義のローマ帝国の終焉(しゆうえん)にすぎず,帝権はフランク人に移行したとする。ローマ教皇,神聖ローマ皇帝,ビザンティン皇帝が並び立つ中世にあっては,このような〈帝権の移行〉〈帝国の更新〉という観念に基づくキリスト教的古代との連続感,およびキリスト教的摂理史観が支配的であり,ローマ没落原因論が展開される余地はほとんどなかった。…
…
[発達の歴史]
ガソリンエンジンの先駆となったのは,燃料としてガスを用いるガス機関であり,1860年ころルノアールJean Joseph Étienne Lenoir(1822‐1900)によってつくられた。N.A.オットーも1876年4サイクル火花点火式のガス機関を製作しているが,毎分回転数が200回程度で,馬力当りの重量も数百kgと重いものであり,燃料もガスであるため定置用に限られていた。83年G.ダイムラーは高速化により軽量化した小型4サイクルガソリンエンジンをつくり,85年二輪車を,86年四輪車を走らせた。…
…熱機関
[発達と利用の歴史]
初期の内燃機関は負圧を利用するいわゆる大気圧機関であり,また無圧縮式であったため熱効率も低かったが,機構的には蒸気機関からピストン・クランク,ピストンリング,はずみ車など多くのものを取り入れて進歩し,1860年ころにはフランスのルノアールJean Joseph Étienne Lenoir(1822‐1900)により,複動蒸気機関によく似た無圧縮式電気点火ガス機関が商品化された。すでに1838年にW.バーネットにより動力ピストンによる混合気の圧縮が提案され,また62年にはフランスのボー・ド・ロシャAlphonse Beau de Rocha(1815‐93)により4サイクル方式の理論が提唱されているが,それとは無関係にN.A.オットーは76年単動1シリンダーのガス機関をつくった。これが4サイクルエンジンの最初のもので,ガス交換用および火炎点火用すべり弁はかさ歯車を介してクランク軸の1/2の回転数で駆動された。…
…実際の危険ではない想像上の危険でも,人は恐れを感じるが,いずれの場合でも,対象がはっきりしている時には恐れ,対象が漠然としている時には不安とよぶのが通例である。根源的恐れとしては,宗教的体験による情動として,R.オットーが,その著《聖なるもの》(1917)で,宗教的感情を分析し,神の力や意志,または聖なる力を意味するラテン語のヌーメンnumenから,ヌミノーゼNuminose感情という言葉を作り,その基底に相反する1対の感情が存在することを明確にした。それが畏怖(トレメンドゥムtremendum)と魅惑(ファスキナンスfascinans)であり,心理学者のユングは,人間が心の深奥にある元型にふれる時に,この根源的恐れと魅惑を感じると述べている。…
…それゆえ,絶対に聖なるものに対してわたしは滅びるという自覚が,罪意識の原点である。《詩篇》22篇の〈われは虫にして人にあらず〉,《ヨブ記》16章・19章,ルターのいう〈震撼させられた良心〉,R.オットーのいう〈戦慄すべき神秘〉がこれにあたる。そのため,キリスト教の罪観念は一般的価値としての善悪の観念によっては測られないものがある。…
…ベルリーナー・アンサンブルでの彼の仕事は世界的な評価を得たが,その一端は同劇団の舞台美術家の才能によるものであった。ネーアーCaspar Neher(1897‐1962),オットーTeo Otto(1904‐68),フォン・アッペンKarl von Appen(1900‐ )らである。叙事演劇の舞台ではスライドによって説明的なタイトルや解説を,舞台下半分をおおう引幕に投影したりした。…
…ベルリーナー・アンサンブルでの彼の仕事は世界的な評価を得たが,その一端は同劇団の舞台美術家の才能によるものであった。ネーアーCaspar Neher(1897‐1962),オットーTeo Otto(1904‐68),フォン・アッペンKarl von Appen(1900‐ )らである。叙事演劇の舞台ではスライドによって説明的なタイトルや解説を,舞台下半分をおおう引幕に投影したりした。…
※「オットー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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