オトヒメエビ(英語表記)Stenopus hispidus; banded coral shrimp

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オトヒメエビ」の意味・わかりやすい解説

オトヒメエビ
Stenopus hispidus; banded coral shrimp

軟甲綱十脚目オトヒメエビ科 Stenopodidae。体長 5cmほどの美しいエビで,全身が小棘で密に覆われている。胸脚のうち前 3対が鋏をもち,第3脚が特に大きい。白色の地に濃赤色の縞が頭胸甲に一つ,腹部に二つ,第3胸脚に四つあり,長くて白い触角とともによく目立つ。インド西太平洋海域の亜熱帯,熱帯地方の岩礁海岸,サンゴ礁に見られ,大西洋の西インド諸島とその周辺域にも普通に分布する。岩のくぼみにすみ,ハタウツボなど大型魚類の外部寄生虫を取り除く清掃共生(→共生)という習性をもっており,ときに口の中にまで入り込む。そのため cleaner shrimpとも呼ばれる。近縁種が 5種ほど知られ,いずれも色彩が特徴的で美しい。オトヒメエビ科にはほかに小型種も若干知られているが,第3胸脚が鋏となり,著しく大きいことによってほかのエビ類から区別される。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「オトヒメエビ」の意味・わかりやすい解説

オトヒメエビ (乙姫蝦)
banded coral shrimp
Stenopus hispidus

甲殻綱オトヒメエビ科の美しいエビで,白色の地に頭胸甲に一つ,第3腹節,第5~6腹節,第3胸脚の長節と腕節に各一つ,掌部に二つの濃赤色の横縞がある。体長5cm。体全体が鋭いとげで密に覆われており,触角は著しく長くて白い。胸脚の前3対にははさみがあり,第3脚はとくに大きい。房総半島以南の西太平洋,インド洋,大西洋西部の西インド諸島に分布し,岩礁性海岸の浅海やサンゴ礁にすんでいる。ハタやウツボなどの大型魚類が近寄ってくると体表に乗り,ときには口の内部まで気楽に入り込んで外部寄生虫を取り除く。この奇妙な習性は清掃共生と呼ばれているが,互いにかなり積極的で,岩のくぼみにすむエビの長くて白い触角を目印に魚が集まってくるようである。同じような習性をもつエビにモエビ科のアカスジモエビLysmata amboinensisが知られている。体色は白色,赤色,黄色が縦帯状にぬり分けられており,やはり白くて長い触角がよく目だつ。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オトヒメエビ」の意味・わかりやすい解説

オトヒメエビ
おとひめえび / 乙姫蝦
banded coral shrimp
[学] Stenopus hispidus

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目オトヒメエビ科の美しいエビ。房総半島以南各地の岩礁の潮間帯から浅海に普通にみられ、南太平洋、インド洋まで広く分布するほか、大西洋西部の西インド諸島からも知られている。体長6センチメートルに達し、雄のほうがやや小さい。頭胸部、腹部とも鋭い小棘(しょうきょく)で密に覆われている。前3対の胸脚にはさみをもち、第3対がとくに大きい。白色の地に濃赤色の帯が頭胸甲に一つ、腹部に二つ、第3胸脚に四つある。岩礁では長くて白い触角がよく目だち、ハタやウツボなどの大形魚類が集まって体表の外部寄生虫を取り除いてもらう。この奇妙な習性は清掃共生とよばれるが、ときには魚の口の中にまで入り込む。

武田正倫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「オトヒメエビ」の意味・わかりやすい解説

オトヒメエビ

オトヒメエビ科の甲殻類。最も美しいエビの一種で,体と大きいはさみ脚は無数の小棘(きょく)でおおわれ,透明の地に藍や紫赤色の横じまがある。体長5cmくらい。房総半島以南の西太平洋,インド洋,西インド諸島に分布し,岩礁,サンゴ礁などにすむ。ハタやウツボなどの大型魚類の体表に乗り,外部寄生虫を取り除く。水族館などで観賞用として飼育される。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android