オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群

内科学 第10版 の解説

オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(急性散在性脳脊髄炎)

(4)オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(opsoclonus-myoclonus syndrome)
概念
 オプソクローヌス(不随意で律動性のない,多方向性の不規則かつ衝動的な眼球運動)とミオクローヌス(不随意で律動性のない,衝動的な筋収縮による運動)を主症状として,しばしば運動失調を伴うものである.
病因・疫学
 成人期では傍腫瘍性,傍感染性のものがある.傍腫瘍性ではより高齢発症で,随伴腫瘍は小細胞肺癌が最も多く,婦人科癌,乳癌,胃腺癌,非小細胞肺癌,卵巣奇形腫などが,小児では神経芽腫が報告されている.抗Hu抗体を伴うもの,女性では乳癌に抗Ri抗体を伴うものが知られているが,多くの例では既知の自己抗体は検出されない.傍感染性では,Lyme病エンテロウイルスEBウイルスなどさまざまな感染に伴う.また風疹などの予防接種後に生じるものもある.いずれも自己免疫的機序によるものと考えられている.
臨床症状
 ほとんどの症例でオプソクローヌスとミオクローヌスの両方が,急激に生じ2~3週で極期に至る.体幹失調が先行し,歩行困難,転倒が生じる場合があり,ときに意識障害など脳症を伴うこともある.
診断・鑑別診断・検査成績
 感染症候の有無を確認する.本症では,ガドリニウム造影MRIで一般に異常ないが,除外診断として重要である.髄液の細胞数,蛋白は正常またはわずかな増加がみられる.傍腫瘍性の場合は神経症状が先行することが多いので,特に50歳以上,脳症を伴う場合には悪性腫瘍の検索を精力的に行う.癌性髄膜炎,後頭蓋窩腫瘍,多発性硬化症,高浸透圧脳症,肝疾患,フェニトインなどの薬剤の副作用を鑑別する.
治療・予後
 副腎皮質ステロイドを投与する.傍感染性のものや,小児の神経芽腫を伴うものは,反応が良好で軽快することが多い.成人では小児に比して免疫療法に反応しにくいが,シクロホスファミド,大量ガンマグロブリン療法,プロテインA カラムを用いた血液浄化療法などの有効例も報告されている.対症的にはクロナゼパムが有効である.傍腫瘍性では随伴する腫瘍が早期に診断,除去されたものは改善しうるが,後遺症となることが多い.[犬塚 貴]
■文献
Bateller L, Graus F, et al: Clinical outcome in adult onset idiopathic or paraneoplastic opsoclonus-myoclonus. Brain, 124: 437-443, 2001.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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