オルカーニャ(読み)おるかーにゃ(英語表記)Orcagna

精選版 日本国語大辞典 「オルカーニャ」の意味・読み・例文・類語

オルカーニャ

(Andrea Orcagna アンドレア━) イタリア画家彫刻家建築家フィレンツェ派の代表的芸術家。ゴシック的伝統をうけて荘厳な作風を示す。(一三〇八頃‐六八頃

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルカーニャ」の意味・わかりやすい解説

オルカーニャ
おるかーにゃ
Orcagna

生没年不詳。14世紀中葉のイタリアでもっとも優れた、そして絵画彫刻、建築などの多方面に活躍した美術家。本名はアンドレア・ディ・チオーネAndrea di Cioneで、その活動期は1344年から68年とされる。54~57年にフィレンツェサンタ・マリア・ノベッラ聖堂ストロッツィ礼拝堂の祭壇画を制作したが、この作品ではジョット以来の自然主義的傾向がある程度放棄され、中世後期のローマやビザンティンの絵画にみるような宗教的雰囲気の濃い表現に立ち返っている。56年にフィレンツェのオル・サン・ミケーレ聖堂に完成した聖櫃(せいひつ)の制作には数人の助手が協力しており、また装飾過多との批判もあるが、全体の配置にはいささかの破綻(はたん)もみられない。この聖櫃の背面上部を装う浮彫り聖母の死』と『聖母被昇天』は彼自身の手になることが確実視される。59年にはオルビエートに赴き、62年まで滞在して大聖堂正面のモザイクの制作に協力した。フィレンツェに帰ってからは、おりから開始されていた新大聖堂の設計に関与するが、彼の構想が具体的に生かされることはなかった。

 オルカーニャの絵画にはジョットおよびシエナ派の画家たちの影響も認められるが、彼独自の雄勁(ゆうけい)な手法が際だてられた諸作品により、その名声は生涯を通じて高かったという。オルビエト大聖堂の『聖母降誕』、ピサのカンポ・サントにある『死の勝利』『最後の審判』がよく知られている。

[濱谷勝也]

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改訂新版 世界大百科事典 「オルカーニャ」の意味・わかりやすい解説

オルカーニャ
Andrea Orcagna
生没年:?-1368

イタリアの画家,彫刻家および建築家。彼の兄弟ナルドNardoとヤコポJacopoも美術家。彫刻家としての代表作はオルサンミケーレ教会のタベルナクル(聖龕(せいがん))(1359)で,その背後上部の《聖母被昇天》の浮彫は,ジョットの流れをくむ堅固な彫塑性とシエナ派の影響による装飾性,あるいは優雅でソフトな形態感覚を見せる。この二元性は彼の絵画作品であるフィレンツェのサンタ・マリア・ノベラ教会のストロッツィ家の祭壇画(1357)にも顕著で,さらに聖人たちの相貌描写には鋭い写実性が加わっている。1358年主任建築家としてオルビエトに呼ばれ,大聖堂ファサードのモザイク装飾を監督。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルカーニャ」の意味・わかりやすい解説

オルカーニャ
Orcagna, Andrea

[生]1308頃.フィレンツェ
[没]1368.8.25. フィレンツェ
イタリアの画家,彫刻家,建築家。本名 Andrea di Cione。主としてフィレンツェで制作。 1343年頃画家組合に,52年石工組合に加入。彼の唯一の確証ある絵画作品は,フィレンツェのサンタ・マリア・ノベラ聖堂のストロッツィ家礼拝堂の祭壇画 (1354~57) 。彫刻の代表作はオル・サン・ミケーレ聖堂の大壁龕で,これは署名および「1359年」という完成年代が銘記されている。建築家として 59~62年に断続的にオルビエト大聖堂,フィレンツェ大聖堂造営に参加した。

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百科事典マイペディア 「オルカーニャ」の意味・わかりやすい解説

オルカーニャ

フィレンツェで活躍したイタリアの建築家,彫刻家,画家。本名Andreadi Cione。1348年―1359年フィレンツェのオルサンミケーレ教会の造営に従事,同教会の聖龕(せいがん)は彫刻家としての代表作。サンタ・マリア・ノベラ聖堂のストロッツィ礼拝堂の祭壇画(1357年)は唯一の確証ある絵画作品とされる。

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世界大百科事典(旧版)内のオルカーニャの言及

【チオーネ兄弟】より

…14世紀中葉から末に活動したイタリアの画家兄弟で,画家オルカーニャ(本名アンドレア・ディ・チオーネAndrea di Cione)の弟。ともに生没年不詳。…

※「オルカーニャ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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