オートクチュール(読み)おーとくちゅーる(英語表記)haute-couture フランス語

精選版 日本国語大辞典 「オートクチュール」の意味・読み・例文・類語

オート‐クチュール

〘名〙 (haute couture) 高級仕立ての婦人服。転じて、パリの高級衣装店をいう。日本では大きなデパートなどに出ている外国系のデザインを主にしたもの、あるいは著名なデザイナーの店をさしていうことが多い。
※流行うらがえ史(1965)〈うらべまこと〉一五「オートクチュールというのは、日本語で高級洋裁店」

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デジタル大辞泉 「オートクチュール」の意味・読み・例文・類語

オート‐クチュール(〈フランス〉haute couture)

高級衣装店。特にパリの高級衣装店協会に加盟している店のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オートクチュール」の意味・わかりやすい解説

オートクチュール
おーとくちゅーる
haute-couture フランス語

パリの高級婦人衣装店、またその店でつくられる高級仕立服のこと。オートクチュール組合(通称サンジカルLa Chambre Syndicale de la Couture Parisienne)に属し、店(メゾンとよばれている)の専属デザイナーは顧客のために、シーズンに先駆けて創作デザインを発表し、売るのであり、一般の注文服店や既製服を売る店とは区別される。組合の規約により、新作の発表は年2回(1月末と7月末)行われ(パリ・オートクチュール・コレクション)、そのシーズンの作品をマヌカン(モデル)に着せて、招いた個人客やバイヤー百貨店などの仕入れ担当者)、ジャーナリストに見せることが義務づけられている。ここから、たびたび世界的な流行が生み出された。

深井晃子

歴史

フランスは18世紀になると、はっきりと世界のファッションをリードしていた。その中心となったのは、ポンパドゥール侯爵夫人、マリ・アントアネット王妃ら宮廷の女性たちであり、マリ・アントアネットのお抱えデザイナー、ローズ・ベルタンは、オートクチュールの祖とされる。自分の創作デザインを客に売るという、今日のオートクチュールの基礎を築いたのは、1857年パリに自店を開いたイギリス人ウォルト(英名ワース)Charles-Frédéric Worth(1825―95)である。以後、20世紀婦人服の基礎となるデザインを創作したポワレビオネ、シンプルこそシックという衣服哲学を打ち出したシャネルスキャパレリディオールバレンシアガカルダンなどによって、オートクチュールが誕生したパリの精神的、物理的風土は今日まで連綿と受け継がれている。大衆消費社会が進展した1960年代以降、上流階級ではなく一般の女性がファッション・リーダーとなり、プレタポルテ(既製服)が活発化したとき、その存続を危ぶむ声も聞かれた。しかし、その世界的に高い知名度によるオートクチュールのブランドのプレタポルテ、香水をはじめとするアクセサリーの販売、ライセンス契約などで経済的安定が図られた。また、高品質性、唯一性を強調しながらも才能のある若年デザイナーを起用し、オートクチュールの新しいイメージが打ち出され、体質強化を図っている。

[深井晃子]

『深井晃子著『パリ・コレクション』(1994・講談社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「オートクチュール」の意味・わかりやすい解説

オート・クチュール
haute couture

フランスのパリで発達した,服飾品のデザインと仕立てを行う高級衣装店。デザインの独創性,高度な技術,高価さで知られる。ルイ16世の王妃マリー・アントアネットの宮廷デザイナーとして知られたローズ・ベルタンが,1773年からフランス革命時まで店を構え,貴族女性の衣服を作ったことに由来する。しかし,近代のオート・クチュールは,1858年,パリに店を開いてナポレオン3世の皇后ウジェニーのデザイナーとなったイギリス人,C.F.ワースに始まる。彼によって婦人服デザインに男が加わり,それまでの人形(ファッション・ドール)に代わって人間のファッションモデル(マヌカン)を採用し,初めてのファッションショーが催された。また,客の方から店に来て注文するという方法がとられ,西欧の上流階級の女性たちが競って顧客となった。20世紀に入ると,P.ポアレG.シャネルE.スキャパレリなどが続出,映画,演劇の衣装部門でも活躍した。1911年にオート・クチュール組合が結成され,以後この組合の加盟店を指すことになる。20年代から30年代にかけて創造性,機能性,美しさにおいて優れた作品が生まれ,現代ファッションを生み出す役割を果たした。第2次大戦後,ディオールの〈ニュー・ルック〉発表を契機に,より活発になり,サン・ローラン,M.ボアンなどの新進デザイナーが活躍する。60年以後はオート・クチュールも注文服のほかにプレタポルテ(既製服)が経営の重要な部門になる。日本ではカルダンと高島屋が60年に提携して以来,パリのファッションが一般に知られるようになり,デザイナーの名前も一般化してきた。
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百科事典マイペディア 「オートクチュール」の意味・わかりやすい解説

オートクチュール

フランス語で高級衣装店の意。一般にはパリ・オートクチュール組合に属するものをさす。ディオールカルダンジバンシーサン・ローランなどの店が名高く,シーズンごとにコレクションを開き新作を発表する。
→関連項目バレンシアガブティックプレタポルテ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オートクチュール」の意味・わかりやすい解説

オートクチュール
haute couture

高級衣装店。本来は高級裁縫の意。創始は一般にナポレオン3世妃ウージェニーの専属ドレスメーカー,C.F.ウォルトとされる。 1868年に創立され 1911年に改組されたパリ高級衣装店組合事務局 La chambre syndicale de la couture parisienneの規約にみられるオートクチュールの条件は,(1) 年2回,一定期間内に生きたマヌカンを使って 60点以上の作品を発表すること,(2) その店の創作衣装を顧客に売ること,(3) 規格化量産を行わないこと,(4) 外注作業を行わないことなどであり,43年には法的にその著作権が認められた。しかし,66年頃から事務局を離れて別個に活動する店がふえているほか,最近はこれまでの高級注文服に比し,プレタポルテ (高級既製服) の比重が増してきている。

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