オーロラ(極光)(読み)おーろら(英語表記)aurora

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーロラ(極光)」の意味・わかりやすい解説

オーロラ(極光)
おーろら
aurora

地球外より入射する電子や陽子が、地球の超高層大気に衝突して発光させる現象。主として極地方でみられるため極光ともよばれる。

 オーロラはもともとはローマ神話の「夜明けの女神」アウロラギリシア神話のエオスEosにあたる)に由来する。女神アウロラはバラ色の肌、ブロンドの美神とされ、太陽神アポロンの妹である。中緯度でみられる極光が夜明けの光に似ているところから、18世紀ごろから極光がオーロラとよばれるようになった。また、地球以外でも、木星に極光があることが知られている。

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種類

オーロラは、〔1〕極冠グローオーロラ、〔2〕極光帯型オーロラ、〔3〕中緯度オーロラの三つに大別される。このなかでもっとも顕著なものは極光帯型オーロラで、普通オーロラといえばこれをさす。この極光帯型オーロラはさらに(a)カーテン型オーロラ、(b)点滅するパッチ状脈動性オーロラ、(c)ぼんやりした不定形オーロラの3種に分類される。

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分布

オーロラがもっともよくみられるのは、南北両極地方の地磁気緯度65~70度の範囲で、この地域を極光帯とよぶ。極光帯より高緯度(極冠地域)でも、また低緯度でも出現頻度は減少する。出現する緯度は地方時によって異なり、夜間は65~70度が多く、昼間では75~80度と緯度が高くなる。このように、オーロラの出現が地方時による緯度変化を示すことから、オーロラ出現帯(地球を極地上空から見下ろしたとき、同時にオーロラが見える領域)は、極光帯と区別してオーロラ・オーバルaurora ovalなどとよばれている。

 一連のオーロラ・オーバルは、おおむね2種類のオーロラで構成されており、昼間から夕方側を通って深夜に至る部分はカーテン型オーロラであり、残る朝方側の半分は主として脈動性オーロラで、一般に薄いバックグラウンドを伴っている。従来は観測装置の感度不足のため脈動型オーロラが十分に観測できなかったので、この部分はぼんやりした不定形オーロラ(ディフューズオーロラdiffuse aurora)とされていた。

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オーロラの高さ

オーロラの現れる高さは地上約80~数百キロメートルの超高層大気中で、極冠グローオーロラが地上80~100キロメートル、中緯度オーロラが平均的にもっとも高く地上300~600キロメートルと、種類によって高度は異なる。また極光帯のオーロラでは、出現時刻、緯度、種類によって高度は変化する。一般に昼間側の高緯度に出現するカーテン型オーロラは百数十~数百キロメートルと高いが、夕方から深夜にかけてはしだいに下がって100~百数十キロメートルとなる。深夜から朝方のオーロラは主として脈動性オーロラで、その高さは一般にカーテン型より低く90~100キロメートルあたりに著しい。

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オーロラの光

発光しているのは希薄な超高層大気であり、したがって発光の色は、空気の主成分である窒素、酸素の分子や原子、それらのイオンが入射粒子(電子、陽子)によって衝突励起し、それら励起した粒子が、より低いエネルギー準位に戻るときに放出する固有の光である。オーロラ中の代表的な光は、酸素原子の放出する緑色の光(波長5577Å〈オングストローム〉)、同じく酸素原子の赤い光(波長6300Å、6364Å)、窒素分子イオンの放出する青い帯スペクトル(波長4278Åなど)、それに窒素分子の赤~ピンクの帯スペクトルなどである。

 これらの光はそれぞれ高さや分布が異なっており、たとえば、酸素原子の赤は高さ200キロメートルより高いところで強く、酸素原子の緑および窒素分子イオンの青は100~200キロメートルで強い。また、窒素分子のピンクは高さ100キロメートル以下で強い。このため、活動的なカーテン型オーロラは、上部が真紅、中央部が青緑色、下の縁がピンクという彩りが多い。なお、オーロラ中には、夕方の低緯度側、および朝方の高緯度側のように、水素の輝線のよく見られる部分があり、また、ヘリウムナトリウムなどの光も含まれている。

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オーロラの活動とその原因

極冠グローオーロラは、太陽フレアに際して、太陽から直接飛来する100万エレクトロンボルト(eV)以上の高エネルギー陽子が、直接極冠地方に入射することによるものである。入射粒子が高エネルギー陽子であるために入射高度は深く、したがってオーロラの高度は低い。また陽子が電子を捕捉(ほそく)して中性水素に変わるので、水素の輝線(Hα、Hβなど)が強い。

 極光帯のオーロラはつねに変動しているが、もっとも著しい活動は、オーバルの真夜中の部分から明るさを増し、激しく動き始めて、数分の間にオーバルの幅が数百キロメートルに広がる爆発的な発達(オーロラ嵐(あらし))である。太陽風の中の磁場に南向き(地球の北極から南極に向く)の成分が増えると、太陽風から地球磁気圏に流入するエネルギーが増大し、その結果、地球磁気圏内に大きなエネルギーが蓄えられる。このエネルギーによって磁気圏尾の磁気中性面付近で粒子が急速に加速され、さらに、地上数千キロメートルの高さのあたりで磁力線に沿った電場でいっそう加速が促進され、磁力線に導かれて超高層大気中に入射する。このような機構で入射する電子によって光るオーロラがカーテン型オーロラである。カーテン型オーロラの背の高さが、昼間から夕方を経て夜中に至る間しだいに低くなるのは、このような加速が昼間側よりも夜側で著しいことを示している。人工衛星やロケットによる観測でも、加速電圧が昼間から深夜にかけてしだいに増加することが知られている。

 これに対して、磁気圏尾における加速過程に際して、直接大気中に入射することなく、いったん磁気圏内にとらえられてさらに内側に進入し、わりあい安定して磁気圏内に閉じ込められた高エネルギー粒子が、磁気赤道面付近でプラズマ波動と相互作用をおこし、散乱することによって大気中に入射する、という過程をたどるものもある。このような過程で入射する電子によって光るオーロラが脈動性オーロラである。

 なお、大きな磁気嵐に際して、このように磁気圏内に閉じ込められた高エネルギー粒子群から、数日間にわたってすこしずつ低高度に漏れ出すエネルギーによって、中緯度オーロラが光るものと考えられている。

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オーロラの関連現象

オーロラの爆発的活動のときには、一般にオーロラおよびその近くの電離層内に強い西向きの電流が流れ、これが極磁気嵐の原因となる。この電流は朝方の磁気圏から電離層に向かって流れ込み、オーロラ中を西に流れて夕方の電離層から磁気圏に流れ出している。電流の流れ込みの領域が、強い水素輝線の見られる領域に対応し、電流の流れ出しの領域が、カーテン型オーロラのもっとも活発な部分に対応すると考えてよい。なおカーテン型オーロラ活動には「オーロラヒス・オーロラキロメートル波」という電波が伴い、脈動性オーロラの活動には、コーラス電波や地磁気脈動などを伴うのが普通である。

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『小口高著『神秘のオーロラ』(1978・NHKブックス)』


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