カエルアマダイ(読み)かえるあまだい(英語表記)harlequin jawfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カエルアマダイ」の意味・わかりやすい解説

カエルアマダイ
かえるあまだい / 蛙甘鯛
harlequin jawfish
[学] Stalix histrio

硬骨魚綱スズキ目アゴアマダイ科に属する海水魚。日本では和歌山県、愛媛県、長崎県からとれているが、スラウェシ島、グレート・バリア・リーフ、ニュー・カレドニアなど西太平洋、インド洋に広く分布する。体高はやや低く、体長の約19%。頭部を除いて側扁(そくへん)する。頭は円筒形。吻(ふん)はきわめて短い。目はやや小さくて(眼径は体長の約11%)、頭の前端に位置し、上顎(じょうがく)にきわめて接近する。両眼間隔幅は狭い。口は非常に大きく、ほとんど水平に開く。下顎はわずかに上顎に含まれる。上顎の後端は目の後縁を著しく越えて、頭のおよそ中間まで伸びる。上下両顎は前部に数列の歯が並び、後方ではだんだんと小さく、1列になる。上顎の前端に数本の肥大した歯があるが、下顎にはない。鰓耙(さいは)は上枝に8~9本と下枝に14~16本が並ぶ。鱗(うろこ)は小さく、縦列鱗(りん)数は47~50枚。頭部、項部(背びれ起部より前の後頭部)、胸部胸びれ基底および腹びれの基底の後ろに鱗がない。側線鰓孔の上方付近から背びれ基底近くに沿って走り、第2番目の分節した軟条下方に達する。背びれは10~11棘(きょく)11~12軟条で、第1棘~第7棘または第8棘は先端で二叉(にさ)し、そのうち第1棘~第5棘は非常に深い。前の棘はほとんど水平で、鰭膜(きまく)の折り畳まれた状態からあまり開かない。第1番目の分節した背びれと臀(しり)びれ軟条は分枝しないが、それ以外は分枝する。臀びれは2棘10~11軟条。尾びれの後縁は丸い。腹びれは短く、肛門(こうもん)に達しない。標本では体の上半分に鰓孔の上端から尾びれ基底中央に達する幅広い暗色の縦帯があり、それ以外は淡色鰓蓋(さいがい)と鰓膜は暗褐色。背びれ、臀びれ、尾びれに2本の黒色帯がある。最大体長6センチメートルほどになる。水深20メートル以浅の砂礫(されき)底にすむ。海底の穴から頭だけを出している本種とされている写真があるが、本種であるかは不明。種小名histrioは道化師(harlequin)を意味する。はでなよく目だつ黒色帯は道化師を連想させるようである。前から見た顔つきはカエルの顔を連想できる。

 アゴアマダイ科は、口が大きく、頭は無鱗、腹びれは1棘5軟条で、外側の2本の軟条は強くて不分枝、内側の3本の軟条は弱くて分枝するのが顕著な特徴である。本種は同科のカエルアマダイ属に属するが、同属は背びれ棘部が低くて、棘の先端が二叉すること、背びれと臀びれの軟条数が少ないことなどで、アゴアマダイ科のもう1属のアゴアマダイ属と容易に区別できる。

[尼岡邦夫 2022年2月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android