カキドオシ(英語表記)Glechoma hederacea L.ssp.grandis(A.Gray)Hara

改訂新版 世界大百科事典 「カキドオシ」の意味・わかりやすい解説

カキドオシ
Glechoma hederacea L.ssp.grandis(A.Gray)Hara

山野道端に普通にみられるシソ科多年草。花が終わると茎は倒れてつる状に長く伸び,垣根を通り越して行くところからカキドオシと呼ばれるようになった。茎は初め直立して高さ5~25cm。葉は対生して葉柄があり,葉身は円心形で縁には鈍い鋸歯がある。花は4~5月ごろ上部の葉腋(ようえき)に1~3個ずつつき,紅紫色で長さ15~25mm,基部は筒状で,先は唇形となって5裂し,下側の裂片は少し大きくてさらに2裂し,濃紫色の斑点がある。おしべは4本,花筒の中につき,短い。花柱は細長く,先が2裂する。果実は小さな種子状の4個の分果に分かれる。シベリアから東アジアの各地に広く分布し,花の少し小さい亜種ssp.hederacea(英名ground ivy)がヨーロッパに分布する。イギリスでは16世紀ころまでホップの代りにビールに用い,またこの煎じ汁を咳や肺病の薬としていた。全草を漢方で連銭草(れんせんそう)といい,精油(モノテルペン類),タンニン,苦味物質を含む。利胆作用があり,胆囊炎,胆石症,肝臓や泌尿器系結石に用いられるほか,糖尿病や腎臓炎に,また新鮮汁をおでき,打撲症のはれや痛みに内外用する。また茶として飲用することがある。

 カキドオシ属Glechoma世界に数種あって北半球温帯に分布している。
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食の医学館 「カキドオシ」の解説

カキドオシ

《栄養と働き&調理のポイント》


 シソ科の蔓性(つるせい)多年草。生命力が強く、蔓が垣根を越えても生えてくるので、この名がつきました。
 葉の形が古銭に似ているため、連銭草(れんせんそう)とも呼ばれます。
○漢方的な働き
 西欧の民間療法では、はちみつ砂糖と合わせてお茶として飲むとかぜやせきによいとされ、子どものかんの虫にも効くといわれています。
 カキドオシはビタミンCを多く含んでおり、そのうえ、硝酸(しょうさん)カリなど血糖降下作用をもつ成分が含まれているので、糖尿病に有効とされています。この場合、乾物のカキドオシを用います。民間療法としては、カキドオシとハトムギの実を各10g用意し、600ccの水で2分の1に煎(せん)じ、1日3回にわけて空腹時にあたためて飲むとよいとされています。
 腎臓病(じんぞうびょう)によるむくみをとるには、カキドオシ15gを600ccの水で2分の1になるまで煎じて1日3回にわけて空腹時にあたためて飲みます。排尿をうながし、むくみがとれるといわれています。
○外用としての利用法
 また、生葉を刈り取ってすり鉢ですったものは、化膿性(かのうせい)のできものに有効です。開花期の葉の汁は、水虫にも効果的。汁を患部に1日数回塗り、1週間以上続けるとかゆみがとれてくるといわれています。
 生の根の部分は肩こりにも効果があります。根をよく洗い、すりおろして小麦粉で練り、布にのばして患部に貼(は)ります。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カキドオシ」の意味・わかりやすい解説

カキドオシ
かきどおし / 籬通
[学] Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) Hara

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草で、道端で普通にみられる。茎は方形で、花期には高さ5~25センチメートル、花期後は横にはって1メートル以上にも伸びる。和名はこの茎の状態からきている。花は4~5月ごろ葉腋(ようえき)に1~3個ずつつき、株によって大きいのと、やや小さいのがある。萼(がく)は筒状。花冠は長さ15~25ミリメートル、二唇形で、下唇の中裂片はもっとも大きく、濃紫色の斑点(はんてん)がある。北海道から九州、台湾、中国東部に分布し、他の変種が東アジアに広く分布する。小児の疳(かん)を治すのによいといわれ、カントリソウとよぶ地方もあり、糖尿病、腎臓(じんぞう)炎にも効くという。カキドオシ属は北半球に数種分布する。

[村田 源 2021年8月20日]


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百科事典マイペディア 「カキドオシ」の意味・わかりやすい解説

カキドオシ

シソ科の多年草。北海道〜九州,東アジアに分布し,道ばたや野原にはえる。茎は高さ10〜20cm,葉は対生し長い柄があり,腎円形で縁にはまるい鋸歯(きょし)がある。春,葉腋に1〜3個の唇形(しんけい)花がつき,花冠は長さ15〜25mm,淡紫色で下唇の内面に濃紅紫色の斑点がある。花が終わると茎は倒れて地をはい,垣根の向こうにまで伸びていくというので,この名がある。

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