カスパル(英語表記)Caspar Schaemberger

改訂新版 世界大百科事典 「カスパル」の意味・わかりやすい解説

カスパル
Caspar Schaemberger

ドイツ,ライプチヒ生れの理髪外科医。ドイツ人という説もある。江戸前期の長崎出島オランダ商館医。生没年不詳。在日期間1649-51年(慶安2-4)。ブレスケン号事件(1643),フィヤリョ事件(1647)等で日蘭関係が一時険悪となり,恒例の江戸参府が中絶した。事態の好転をはかるためオランダ本国から特使が派遣されたとき,特使一行とともに来日し,幕府要請で砲術伝習要員らと江戸に残留して医学伝習を行い,翌年も再出府して外科術と膏薬療法を伝えた。その医術は河口良庵や猪股伝兵衛ら門人によってカスパル(加須波留)流外科として発展した。
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朝日日本歴史人物事典 「カスパル」の解説

カスパル

没年:1706.4.4(1706.4.4)
生年:1623.9.11
江戸前期に来日したオランダ商館医。ドイツ・ライプチヒの商家に生まれ,同地で外科術を学ぶ。慶安2(1649)年9月に来日し,長崎出島のオランダ商館付医官として慶安4年まで滞在。この間2度にわたって商館長の江戸参府に随行した。第1回参府時に幕府から江戸残留を命じられ,10カ月の滞在中に医学を伝授。のち門人らによってカスパル流外科として広められた。その治療法は17方(処方)の膏薬を用いることを主とした。帰国後はライプチヒの市民権を得て商人となり,大庭園付きの邸宅を構えて莫大な遺産を残した。長男はライプチヒ大学長。<参考文献>W.ミヒェル「出島蘭館医カスパル・シャムベルゲルの生涯について」(『日本医史学雑誌』36巻3号),同「カスパル・シャムベルゲルの『弔辞』について」(同37巻4号)

(宗田一)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「カスパル」の解説

カスパル Caspar

?-? オランダの測量家。
享保(きょうほう)19年(1734)刊「町見弁疑」に加須波留の名がみえ,寛永(1624-44)のころに長崎にきてヨーロッパ流の測量術をつたえたという。また「規矩(きく)術伝来之巻」には測量家樋口権右衛門(小林義信)がオランダ人カスハルから伝授されたとある。外科医のカスパルとは別人とかんがえられている。

カスパル Caspar Schamberger

1623-1706 ドイツの医師。
1623年9月11日ライプチヒ生まれ。慶安2年(1649)来日し,長崎出島のオランダ商館付医師として3年まで滞在。この間,商館長の江戸行きにしたがい約10ヵ月とどまる。江戸,長崎滞在中に河口良庵らに医学をおしえ,その治療法はカスパル流外科としてひろめられた。1706年4月4日死去。82歳。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カスパル」の意味・わかりやすい解説

カスパル
Caspar, Schamberger(Schambergen)

オランダの医師。慶安2 (1649) 年オランダ東インド会社の商館付き医師として来日。特使 A.フリシウスに従って江戸参府を行い,日蘭関係改善のため,砲手ユリアーン・スヘーデルとともに約 10ヵ月江戸にとどまり,医術を教えた。そのとき教えた医術がカスパル流外科と呼称され,のちにいくぶん改変されたが,幕末まで伝承された。

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世界大百科事典(旧版)内のカスパルの言及

【手術】より

…そして,これが現在の日本の西洋医学の基礎ともなった。1649年(慶安2)出島に到来したオランダの医師カスパルはフランスの外科医パレの医学を伝えたが,彼の教えた医学はカスパル流外科として知られる。 1774年(安永3)に杉田玄白,前野良沢らによってクルムスJ.A.Kulmusの解剖書を翻訳した《解体新書》が刊行されたが,それから31年後の1805年(文化2),華岡青洲は曼陀羅華(まんだらげ)(チョウセンアサガオ)を主とした麻沸湯による全身麻酔下での乳癌手術に成功している。…

※「カスパル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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