カタルーニャ住民投票(読み)かたるーにゃじゅうみんとうひょう

知恵蔵 「カタルーニャ住民投票」の解説

カタルーニャ住民投票

スペインカタルーニャ自治州で行われた「独立」の賛否を問う住民投票。州議会が定めた関連州法に基づき、2017年10月1日に州全土で実施された。多くの投票所が閉鎖されるなど、独立を阻止したいスペイン中央政府の介入があったため、投票率は43%(有権者約530万人)にとどまったが、賛成90.2%、反対7.8%と、独立支持が圧倒的多数を占めた。なお、国の憲法裁判所は住民投票を決めた州法自体が違憲であるとして、投票実施前に差し止め命令を出している。
投票結果を受け、自治州のプッチダモン首相は同月10日に開かれた州議会で、独立の権利を得たと宣言、州議会も独立宣言の決議を賛成多数で採択した。しかし、中央政府のラホイ首相は憲法違反だとして認めず、州の自治権の一部を停止、プッチダモン首相を解任するとともに、州議会の解散と州議会議員選挙の実施を発表した。これによって政府と自治州の対立は決定的になり、独立問題は長期化の様相を呈している(17年10月末時点)。
カタルーニャ州はスペイン北東部に位置し、州都バルセロナは観光・商工業都市として栄えている。人口は約750万人、面積は約3万2千平方キロメートル(関東地方とほぼ同じ)。独自の文化や言語(カタルーニャ語)を持ち、スペイン17州・2自治都市の中でも、バスク州と並んで以前から分離・独立志向が強い。1931年にはスペイン第二共和制の成立によって自治政府の設立を宣言し、スペイン内戦(36~39年)では反フランコの拠点にもなった。その後、フランコ独裁政権の下、カタルーニャ語の使用が禁じられるなど、多くの弾圧を受けた。75年にスペイン王制が復活。その後、民主化の進展により、78年のスペイン新憲法の制定で自治州となったが、十分な自治権が認められず、地域ナショナリズムの高まりとともに、次第に中央政府への不信感を強めていった。州の人口は国全体の約15%だが、GDP(国内総生産)では約20%を占めている。スペイン経済を牽引しているにもかかわらず、税が公平に再分配されていないという不満、とりわけ2009~10年のユーロ危機以降、富が不当に奪われているという、中央政府への州住民の不満が高まっていた。

(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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