カナダモ(英語表記)waterweed
ditchmoss
Elodea canadensis Rich

改訂新版 世界大百科事典 「カナダモ」の意味・わかりやすい解説

カナダモ
waterweed
ditchmoss
Elodea canadensis Rich

北アメリカ原産トチカガミ科の水生植物で,19世紀にヨーロッパ各国の水路に帰化し,急速に広がった。この現象はwater pest(水のペスト)と呼ばれている。ただし日本に野生化しているのは,近縁コカナダモが多い。雄花にも花弁があり,花柄は切れず萼筒が伸びることがコカナダモとは異なる。コカナダモE.nuttalliiPlanch.)St.Johnは北アメリカ東部原産で沈水性の多年草。日本には昭和の初めころ雄株だけが帰化し,栄養繁殖によって増えている。茎は水中を伸長し,各節に2~4枚ずつの葉を輪生する。葉の縁に細かい鋸歯がある。5~6月に葉腋(ようえき)の苞鞘(ほうしよう)の中に1個の雄花をつける。雄花は花柄が切れて水面に浮かび開花する。小さい萼片が3枚,花弁はなく,おしべが9本ある。雌株は日本には自生しないが,雌花は萼筒が伸びて水面にまで達し開花する。萼裂片が3個,白色の花弁が3枚,仮雄蕊(かゆうずい)が3本と花柱が3本ある。原産地では切れた雄花が水面を流れて雌花の花柱につき,受粉が行われる。

 オオカナダモEgeria densa Planch.はアルゼンチンの原産で,これも雄株だけが大正時代から日本に帰化し,栄養繁殖をしている。葉は各節に3~6枚ずつ輪生する。1個の苞鞘内に雄花のつぼみが2~4個でき,順々に開花して1日でしぼむ。開花時には萼筒が細長く水面まで伸びる。3枚の花弁があり,白色で内側の基部は黄色である。

 これら3種とも,光合成呼吸などを調べる植物生理の実験によく使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナダモ」の意味・わかりやすい解説

カナダモ
かなだも / 加奈陀藻
[学] Elodea canadensis Michx.

トチカガミ科(APG分類:トチカガミ科)の沈水性多年生水草。クロモに似るが雌雄異株。カナダモの仲間は世界中に広く移入しているものがある。日本の帰化種には、北アメリカ原産のコカナダモE. nuttallii (Planch.) St.Johnと南アメリカ原産のオオカナダモEgeria densa Planch.があり、2種とも雄株だけが移入している。茎は折れやすいが、再生力が強く、無性繁殖して日本各地の池や沼に分布。輪生葉はコカナダモは普通は3枚、長さ0.6~1.5センチメートル、オオカナダモは普通は4~5枚、長さ1~3センチメートル。コカナダモの雄花はクロモに似ていて、葉腋(ようえき)に単生、萼片(がくへん)3枚、雄しべ9本、包鞘(ほうしょう)から脱離して水面で花粉を出す。オオカナダモの雄花はトチカガミの雄花に似ていて、白色で包鞘から順次3個水面上に開く。

[大滝末男 2018年9月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナダモ」の意味・わかりやすい解説

カナダモ
Elodea canadensis

トチカガミ科の水生多年草。日本では北アメリカから渡来したものが,淡水魚,熱帯魚の水槽の中で培養されている。逸出して野生化したものは比較的きれいな水域でときどき急増し,水流をせきとめてしまうこともある。長さ 40~60cmほどの茎に線形の葉が3枚ずつ輪生する。雌雄異株で,雌花は水面に浮び,雄花は水面下で葯 (やく) が開く。近縁種オオカナダモ E. densaも魚類とともに水槽で培養される。

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世界大百科事典(旧版)内のカナダモの言及

【クロモ】より

…池や小川に生えるトチカガミ科の沈水性の多年草(イラスト)。茎は水中に長く伸び,各節に2~6枚の葉を輪生する。葉は長さ1~1.5cm,幅1~2mmで縁に鋸歯がある。雌雄異株で8~10月に開花する。雄花は葉腋(ようえき)の苞鞘(ほうしよう)の中に1個だけでき,花柄が切れて水面に浮き上がり開花する。萼片は3枚で卵円形,花弁は3枚で線形,淡紫色,ともに反りかえる。雄花は水面を風に押されて雌花に近づく。雌花は子房が苞鞘の中にあり,萼筒が細長く伸びて水面に達し開花する。…

※「カナダモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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