カナムグラ(読み)かなむぐら

改訂新版 世界大百科事典 「カナムグラ」の意味・わかりやすい解説

カナムグラ (葎草)
Humulus scandens(Lour.)Merr.

路傍や河原などの荒地に繁茂するアサ科の一年生のつる草。東アジアの暖帯から亜熱帯に広く分布する。つる性の茎は数mに及ぶ。茎と葉柄には逆向きの小さなとげがあり,他の植物にまつわりつくのに役立っている。葉は掌状に5~7裂し,長さ5~15cm,両面にざらざらした毛がある。雌雄異株で,性染色体が分化している。花期は8~9月。雌花は大きな苞につつまれ,松かさ状。雄花円錐花序につき,花被片5枚。果実はレンズ形で直径約5mm,ウズラの卵の模様に似た斑紋があり,黄褐色で上方に微毛がある。欧米では日よけに用いられることがあり,斑入りの品種が育成されている。また薬用にもされ,解熱利尿に効があるという。近縁のカラハナソウH.lupulus L.var.cordifolius(Miq.)Maxim.は葉が全縁または3中裂である点で区別される。なお,本種はビールの苦みをとるホップ変種である。中部地方以北の山地に野生する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナムグラ」の意味・わかりやすい解説

カナムグラ
かなむぐら / 鉄葎
[学] Humulus scandens (Lour.) Merr.
Humulus japonicus Sieb. et Zucc.

アサ科(APG分類:アサ科)の一年生つる草。茎や葉柄には小さな逆向きの刺(とげ)がある。葉は対生で長い柄があり、掌状で深く5~7裂し、長さ、幅ともに5~12センチメートル、基部は心臓形で縁(へり)に整った鋸歯(きょし)がある。両面に粗い毛があってざらつき、裏面に黄色の腺点(せんてん)がある。雌雄異株で花期は9~10月。雄花序は腋生(えきせい)し、大形でまばらな円錐(えんすい)花序をなし、多数の黄緑色の雄花をつける。雄しべ5本、花被(かひ)5枚、葯(やく)は淡黄色で長い花糸で下垂する。雌花序は球果状の広卵形で柄があり、包葉は緑色で花期後に増大し、果期に紫褐色を帯びる。痩果(そうか)は卵円形で長さ4~5ミリメートル、黄褐色で斑紋(はんもん)があり、かすかな毛がある。野原荒れ地に生える雑草で、日本全土に生え、中国にも分布。中国名は葎草。

[小林純子 2019年12月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナムグラ」の意味・わかりやすい解説

カナムグラ
Humulus japonicus

アサ科のつる性一年草。日本全土,および中国,台湾に分布し,路傍や藪などに自生する。全草に鉤状のとげがあって逆向きになっており,他物にからんで長く伸びる。対生する葉は有柄で 5~7片の掌状に深裂し,裂片は披針形で鋸歯があり,葉面はざらざらしている。雌雄異株。雄花穂には多数の雄花をつけ,緑色の葉片が 5枚と黄色のがある。雌花穂は単一の雌花からなる短穂となり,痩果は扁円形で紫色の斑紋がある。

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百科事典マイペディア 「カナムグラ」の意味・わかりやすい解説

カナムグラ

日本全土,東アジアに分布するクワ科のつる性一年草。アサ科とされることもある。荒地や野原にはえ,茎や葉柄には小さい逆とげがあって,他物にからむ。葉は対生し,掌状に5〜7裂しざらつく。雌雄異株。秋,円錐状の花穂を出し,多数の淡黄緑色の雄花をつける。雌花は短穂状につき下垂する。

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