カニツリグサ(読み)かにつりぐさ

改訂新版 世界大百科事典 「カニツリグサ」の意味・わかりやすい解説

カニツリグサ (蟹釣草)
Trisetum bifidum(Thunb.)Ohwi

草原道端に普通のイネ科多年草和名は,子どもがこの草の茎でサワガニを釣って遊ぶからついたという。まばらな株を作り,茎は高さ60cmくらいで,細く,葉とともに軟らかい。葉は線形で,長さ15cm,幅は5cmくらいで,葉身の裏面と鞘(さや)に毛がある。花序は5~6月ころ,茎の頂にあらわれ,やや密な円錐形で,先端は多少垂れ,長さ20cmくらいあり,初めは多少紫色を帯びるが,後では黄褐色になり,多少光沢がある。小穂は長さ7mmほどで,多少毛があり,3~4個の小花があり,花穎(かえい)の先は2裂してその裂片の間から長い芒(のぎ)が出る。中国,朝鮮半島から日本全土に分布する。

 この属には高山植物のリシリカニツリがあり,また牧草に利用されるカニツリススキT.sibiricum Rupr.はカニツリグサを大きくしたような形のシベリアからアラスカ産の一種である。同じく牧草のオオカニツリは属が異なる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カニツリグサ」の意味・わかりやすい解説

カニツリグサ
かにつりぐさ / 蟹釣草
[学] Trisetum bifidum (Thunb.) Ohwi

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。根茎は目だたず、稈(かん)はやや柔らかく直立し、高さ40~80センチメートル。5~6月、稈の先に多くの枝分れをし、先が下垂する円錐(えんすい)花序をつける。小穂は2、3個の小花があり、光沢がある。護穎(ごえい)は緑褐色でざらつき、長さ5~7ミリメートル、背面上部からねじれた芒(のぎ)を伸ばす。平地の草原にみられ、北海道から九州および朝鮮、中国に分布する。名は、この植物を使って子供がカニを釣って遊ぶことによる。近縁のリシリカニツリT. spicatum (L.) K.Richt.は高山に生え、植物体が小さく、多少軟毛があり、花序が穂状になるので区別できる。

[許 建 昌 2019年8月20日]

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