カリウム(読み)かりうむ(英語表記)potassium 英語

精選版 日本国語大辞典 「カリウム」の意味・読み・例文・類語

カリウム

〘名〙 (Kalium)⸨カリューム⸩ アルカリ金属元素の一つ。記号 K 原子番号一九。原子量三九・〇九八。銀白色、等軸晶系の柔らかい金属。一八〇七年、イギリスのハンフリー=デービーが水酸化カリウムからはじめてとりだした。英語ではポタシウム(potassium)。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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デジタル大辞泉 「カリウム」の意味・読み・例文・類語

カリウム(〈ドイツ〉Kalium)

アルカリ金属元素の一。単体は銀白色の軟らかい金属で、水より軽い。化学的性質はナトリウムに似るが、より活性があり、水と反応して水素を発生し、紫色の炎を上げて燃える。石油中に貯蔵。天然には地殻中に長石雲母などの成分として分布し、海水中や動植物の細胞内液にイオンとして存在する。元素記号K 原子番号19。原子量39.10。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリウム」の意味・わかりやすい解説

カリウム
かりうむ
potassium 英語
Kalium ドイツ語

周期表第1族に属し、アルカリ金属元素の一つ。カリウムはナトリウムとともに化合物として古くから人類によって利用されてきた。

歴史

植物体内にイオンとして存在しているので、これを焼いた灰の中には多量に含まれる。木灰ashを水で浸出した液(アルカリ液)が洗濯に有効であることは『旧約聖書』の時代から知られていた。この液を鉄製のるつぼpotで煮沸濃縮して得られる固形物はpotashとよばれ、ガラスやせっけんの製造に用いられた。これは不純な炭酸カリウムである。このpotashということばは、のちには他のカリウム塩やカ性カリ、すなわち水酸化カリウムにも用いられるようになった。カリウムの化合物はナトリウムの化合物と類似していて区別が明瞭(めいりょう)でなかったが、1761年ドイツのマルクグラーフは炎色反応によって両者を区別することに成功した。すなわち、カリウムは淡紫色を呈するのに対し、ナトリウムは黄色を呈する。

 カリウムの金属単体を単離することに初めて成功したのはイギリスのデービーである(1807)。彼は、高温で融解した水酸化カリウムを電解したところ、負極で明るい光と炎が生ずるのを観察した。電極において生成し、空気中で燃焼して炎と光を発するこの金属を新元素と認め、potash(この場合は水酸化カリウム)から得たことにちなみポタシウムpotassiumと命名した。カリウムというのはドイツ語名で、アラビア語のkaljan(植物の灰)またはヘブライ語のkal(軽い)に由来するといわれる。

[鳥居泰男]

存在

カリウムは他のアルカリ金属元素と同様にきわめて反応性に富んでいるので、自然界においてはつねに1価の陽イオンとして化合物の形で存在しており、単体としては産出しない。地殻中に比較的豊富に存在しており、アルカリ金属としてはナトリウムに次ぐ。不溶性アルミノケイ酸塩、たとえばカリ長石KAlSi3O8、カリ雲母(うんも)KH2Al3Si3O2のような形で岩石成分として分布している。岩石が風化すると、カリウムイオンはナトリウムイオンなどとともに遊離してくるが、ナトリウムイオンに比べ土壌中のコロイド物質に吸着されやすいので、雨水によっても比較的流出せずに残り、植物に吸収される。したがってカリウムは地殻中にはナトリウムとほぼ同量含まれているのに、海水中の存在量は30分の1ぐらいである。まれに地中から水溶性の塩化物、硫酸塩などの塩類として比較的純粋な形でみいだされる。これらは、かつて地球の大部分を覆っていた古代の海が蒸発濃縮された結果沈積したもので、多くは地下深い所に岩塩層と並んで鉱床をなしている。その最大のものはカナダのサスカチェワンのシルビン(カリ岩塩)の鉱床で、地下1キロメートルにあり、塩化カリウムの推定埋蔵量100億トンといわれ、3億年以上前に生成したものと考えられている。また、ドイツのシュタッスフルトの岩塩鉱床からカーナル石KCl・MgCl2・6H2Oが採掘されていることも有名である。

 カリウムはまた動植物の細胞内液にイオンとして存在し、グリコーゲンとよばれる多糖類やタンパク質の合成に関係しており、神経の情報伝達にも重要な役割をもっている。

[鳥居泰男]

製法

金属カリウムは、一般のアルカリ金属と同様に、塩化物や水酸化物の融解電解によって製造することもできる。しかし、安全性や経済性の点から、融解塩化カリウムを850℃でナトリウム蒸気で還元する方法が現在工業的には行われている。

  KCl+Na―→NaCl+K↑
この場合、カリウム蒸気を凝縮させて得た生成物は約1%のナトリウムを主要不純物として含んでいる。分別蒸留によって99.99%の純度にまで精製される。

[鳥居泰男]

性質

銀白色の軟らかい金属であるが、ナトリウムよりはやや硬く、低温ではもろくなる。ナイフで切ることができ、新しい面は金属光沢をしているが、空気中に放置すれば速やかに輝きを失う。これは、水分や酸素と反応して水酸化物や酸化物(過酸化物や超酸化物を含む)の膜ができるからである。比重が1より小さいので、この金属は水よりも軽い。軟らかいこと、軽いことが特徴で、この点では通常の金属の感じとはいささか違っている。カリウムの原子半径が通常の金属、たとえば鉄、銅、金などに比べて著しく大きいうえに、金属原子の充填(じゅうてん)方式のなかではもっとも隙間(すきま)の大きい体心立方格子をもつことによる。金、銀、銅には及ばないが、かなり大きな電気伝導性と熱伝導性をもっている。この金属元素はきわめて反応性に富んでおり、ハロゲン、硫黄(いおう)、リンなどを含むほとんどすべての電気的陰性の元素と直接反応し、K+イオンを含むイオン性化合物を生成する。ナトリウムよりも活性であり、より強い還元剤である。乾燥空気または酸素中で燃焼させると超酸化物を生ずる。水と激しく反応し、次の式のように水素を発生させる。

  2K+2H2O―→2KOH+H2
反応熱によってカリウム自身は融解し、水素が燃焼して発火するに至る。アルコールとも反応し、水素を発生させ、あとにアルコキシド(アルコール類のヒドロキシ基の水素を金属で置換した化合物。アルコラートともいう)を残す。

  2K+2C2H5OH―→2C2H5OK+H2
 ナトリウムなどと同様に液体アンモニアに溶解し、電気伝導性の青色溶液を与える。また、水銀に発熱しながら激しく溶けアマルガムを生ずる。

 カリウムの化合物はほとんどがイオン性であり、わずかの例外を除いて水に可溶である。難溶性塩としては、過塩素酸カリウムKClO4、ヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸カリウムK2[PtCl6]、酒石酸水素カリウムKHC4H4O6、ヘキサフルオロケイ(Ⅳ)酸カリウムK2[SiF6]、ヘキサニトロコバルト(Ⅲ)酸カリウムK3[Co(NO2)6]などがあげられる。いずれも大きな陰イオンを含むのが特徴であり、重量分析に利用されるものもある。K+イオンは錯体を生成する傾向が弱く、アンモニア分子やシアン化物イオンなどを配位した錯体は水溶液中ではできない。しかし、大環状ポリエーテルまたはポリエステル系の化合物には水溶液中で安定な錯体(キレート)をつくるものが知られている。そのうちバリノマイシン、ノナクチンなどの天然物は生体中のK+イオンの伝送に関係しているようである。また各種のクラウンエーテルのような合成化合物は、そのキレートが有機溶媒に可溶な点で、K+イオンの抽出や定量に利用されている。

[鳥居泰男]

用途

金属カリウムは多くの点でナトリウムと類似しているが、製造上の困難のためにナトリウムよりはるかに高価である。したがってナトリウムに比べ工業材料としての利用範囲(還元剤、縮合剤、火薬原料)はあまり広くはない。しかし、一方ではカリウム特有の利用価値が認められ、その面での需要が広がっている。その一つはナトリウムとの合金であって、ナトリウムに近い比熱や熱伝導性をもちながら、室温を含む広い温度範囲で液状をとるものがつくられている。これは原子炉の冷却剤や高温温度計などに使用されている。また、超酸化物として酸素マスクに多量使用されている。

[鳥居泰男]

保存上の注意

金属カリウムを保存する場合には、石油などに浸し密栓しておくことが必要である。このようにしても、長い間にはしだいに酸化を受け過酸化物を伴っていることがあるので、使用の際にナイフなどで切るときには、摩擦による爆発に十分注意しなければならない。

[鳥居泰男]

人体とカリウム

細胞外液に多いナトリウムとは対照的に、カリウムは細胞内液に多く存在する。ナトリウムと同様、内液の酸塩基平衡の維持および浸透圧の調節、また、エネルギー代謝や神経興奮の伝達、筋肉の収縮などに関係し、いくつかの酵素の活性化とも関係がある。体内ではカルシウム、リンに次いで多く含まれる無機質で、主として植物性食品から補給される。野菜、いも、海藻、果物に多く含まれる。体内でのナトリウムとカリウムのバランスがたいせつで、食塩などの形でナトリウムを多くとったときは、カリウムの多い植物性食品を多くとる必要がある。非常に強い食塩制限をしているときに、カリウムの多い食品を多量にとったりすると、カリウムの過剰がおこることがある。カリウムの過剰症には、疲労、神経障害、不整脈などがある。食事からとるべき量については、「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)により、目安量と高血圧予防のための目標量が設定されている。

[河野友美・山口米子]

『丸茂文昭監修、北岡建樹編『電解質シリーズ1 K、酸塩基平衡異常の臨床』(1998・診断と治療社)』『糸川嘉則編『ミネラルの事典』(2003・朝倉書店)』『菱田明・佐々木敏監修『日本人の食事摂取基準2015年版――厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書』(2014・第一出版)』


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改訂新版 世界大百科事典 「カリウム」の意味・わかりやすい解説

カリウム
Kalium[ドイツ]
potassium

周期表第IA族に属するアルカリ金属元素の一つ。カリウムという名称は灰を意味するアラビア語qāliに由来するラテン語kaliumの音訳で,ドイツ語ではそのままKaliumであり,英語でもときにkaliumという場合がある。英名はpot(つぼ)のash(灰)に由来する。カリウム化合物とナトリウム化合物が区別されたのは16世紀のころで,1758年A.S.マルクグラーフはナトリウムの炎色(黄色)とカリウムの炎色(紫色)の相違を指摘している。1807年イギリスのH.デービーが水酸化カリウムの溶融電解によって初めて単体を単離した。地球上にはアルカリ金属としてナトリウムに次いで多量に存在する。反応性が大きいため遊離のまま産することはなく,おもに長石,雲母などのケイ酸塩の形で地殻中に広く分布している。これらの風化によって生ずるカリウムイオンは,土壌中のコロイド状物質に吸着されやすいため流出することが少なく,陸生植物の生理に重要な役割をもち,植物灰分がカリウムを多く含む主因となっている。ドイツのシュタスフルト,フランスのアルザス地方,アメリカのニューメキシコ州などの岩塩鉱床から,塩化物,硫酸塩,およびそれらの複塩の形で大量に産出する。海水中には塩化カリウムKClとして固形塩に2.5%含まれるが,同族元素であるナトリウムに比べるとその含有量は著しく小さい。3種の天然同位体のうち40Kは放射性元素(半減期1.26×109年)で,β⁻崩壊で4200Caに,軌道電子捕獲(EC)およびごくわずかのβ⁺崩壊によって4108Arを生ずる。19Kと18Arの原子量の大きさに逆転がみられるのは,この崩壊生成物である40Arの蓄積による。

銀白色の軟らかい金属。ナトリウムよりやや硬く,低温ではもろくなる。蒸気は沸点では緑色,高温では紫色。体心立方格子(格子定数a=5.333Å(20℃))。剛性率6.8×10⁻9kg/cm。線膨張率8.300×10⁻5/K。比熱0.187(固体),0.217cal/K(液体),熱伝導率0.232cal/cm・s・K,融解熱14.6cal/g,気化熱48cal/g(20℃),電気良導体で比抵抗7.0×10⁻6Ωcm(18℃),磁化率0.55×10⁻6emu。炎色反応は淡紫色でスペクトル線は769.9および766.5nmの二重線。電気的陽性のきわめて強い1価の元素で,化学的性質はナトリウムとよく似ているが,それよりさらに激しい。空気中で酸化されて速やかに光沢を失い,発火することもある。空気中または酸素中で加熱すると紫色の炎をあげて燃え,おもに超酸化物KO2を生ずる。水素中で加熱すると塩型の水素化物KHになる。ハロゲン(X2)と激しく反応してハロゲン化物KXを生ずる。硫黄,セレンとは暖めると反応し,リン,ヒ素,アンチモンとは直接化合する。水銀とは激しく作用してカリウムアマルガムをつくる。水とは-100℃においても反応し,水素を発生して水酸化カリウムを生じ,常温では反応熱のために発火する。硫化水素,ハロゲン化水素とは常温では徐々に,加熱すると激しく反応する。他金属の酸化物,水素化物,酸素酸塩を還元して,その金属を遊離させることがある。二酸化炭素と高温で反応して炭素を遊離する。多くの有機化合物に対し,ナトリウムより強い還元作用を示す。

水酸化カリウムあるいは塩化カリウムなどの融解塩電解によって得られるが,現在工業的には塩化カリウムと金属ナトリウムとの反応によってつくられている。

 KCl+Na─→NaCl+K

ステンレスの反応塔中で融解塩化カリウムとナトリウム蒸気を反応させてつくる。このときカリウムとナトリウムの沸点間の温度(約760~883℃)で操作すると実用的な合金NaK(ナク)が得られるし,高温では十分に純粋なカリウムが得られる。

ナトリウムとほぼ同様の用途をもつが,反応性が激しいため取扱いがむずかしく,しかも高価なため,工業的にはナトリウムほどは使われない。Na-K系の液体合金は,還元剤,原子炉の冷却剤,高温温度計に用いられる。ナトリウムより強力な還元剤として有機合成,有機金属化合物合成に利用される。カリウム化合物の原料ともなる。

石油などの中に浸し,空気および水との接触を断って保存する。直接手で触れてはいけない。
執筆者:

成人はふつう約4gのカリウムを含むが,体液中には0.07gしか含まれず,大部分細胞中にイオンK⁺として存在する。これに対してナトリウムイオンNa⁺濃度の分布はカリウムの場合とまったく対照的で,細胞内にはきわめて少量しか含まれない。細胞内外におけるこのような著しいイオン濃度の違いは,細胞膜に存在するイオンポンプと呼ばれる機能によってエネルギー(ATP)を消費しながら積極的に維持されている。細胞内における高濃度のK⁺は,リボソームにおけるタンパク質合成や多くの酵素系の活性のために不可欠である(たとえば解糖系のピルビン酸キナーゼ)ほか,神経刺激伝達における活動電位の発生に重要な役割を果たしている。植物においては三大栄養素(窒素,リン酸,カリウム)の一つである。カリウム欠乏症を防ぐために肥料として大量に用いられる。カリウムは細胞の浸透圧や原形質のコロイド状態の調節に関与していると考えられている。ジャガイモ,テンサイなどは多量にこのイオンを含み,カリウム植物と呼ばれる。
執筆者:


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化学辞典 第2版 「カリウム」の解説

カリウム
カリウム
potassium

K.原子番号19の元素.電子配置1s22s22p63s23p64s1の周期表1族元素.原子量39.10.2種類の安定同位体(39K,41K)がある.放射性同位体は7種類の存在が知られている.1807年H. Davy(デイビー)により水酸化カリウムの融解電解で遊離された.古くから植物の灰ashを鍋potで煮て得られる炭酸カリウムはpotashとして知られており,Davyはこれをもとにpotassiumと命名した.中世には,炭酸カリウムと天然ソーダ・炭酸ナトリウムが区別されておらず,欧州ではnatron,アラブ圏ではalkaliとまとめてよばれていたが,M.H. Klaprothが両者の違いを認めて,1797年に前者をkali,後者をnatronとよぶことを提案した.今日でもドイツ語圏では元素名はKaliumで,日本語の元素名はドイツ語名を採用している.
天然には遊離状態で存在せず,おもにケイ酸塩として地殻中に広く分布する.地殻中の存在度9100 ppm.植物の灰に多く含まれる.ドイツやフランスの鉱床から塩化物,硫酸塩などの複塩として多量に産出する.また,海水中には塩化カリウムとして0.38 g dm-3 含まれている.カリウムの水酸化物,ハロゲン化物の融解電解で得られ,真空蒸留により精製する.銀白色の軟らかい金属.体心立方格子構造.格子定数a = 0.533 nm(20 ℃).融点63.65 ℃,沸点774 ℃.密度0.86 g cm-3(20 ℃).融解熱2.4 kJ mol-1,蒸発熱77.4 kJ mol-1.イオン化電位4.318 eV.炎色反応は淡紫色.電気的陽性の強い元素で,酸化数1の化合物をつくりやすい.表面は空気中でただちに酸化されて光沢を失う.発火することもある.鉱油中に保存する.空気中で熱すると燃えて超酸化カリウムKO2を生じる.ハロゲン族,酸素族,硫黄族の元素と作用し,また水素気流中で熱すると水素化カリウムとなる.水とはげしく反応して水素を発生し,生じた水素は反応熱のため発火する.ほかの金属の塩を還元してその金属を遊離する.有機物に対し強い還元作用を示す.液体アンモニア,エチレンジアミン,アニリンなどに溶け,水銀とはアマルガムをつくり,多くの金属に合金をつくって溶ける.カリウム化合物の原料,有機合成の還元剤,縮合剤に用いられる.ナトリウム-カリウム合金は原子炉の冷却剤として用いられる.[CAS 7440-09-7]

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百科事典マイペディア 「カリウム」の意味・わかりやすい解説

カリウム

元素記号はK。原子番号19,原子量39.0983。融点63.65℃,沸点765℃。アルカリ金属元素の一つ。ポタシウムとも。1807年H.デービーが苛性カリKOHを融解電解して初めて単体を得た。銀白色の柔らかい金属。化学的性質は激しく,水を分解して水素を発生,空気中では直ちに酸化される。石油中に貯蔵。炎色反応は紫。還元剤。遊離状態では存在せず,おもにケイ酸塩として地殻中に多量に存在,海水中にも塩類の約2.5%を占める。生体必須元素で,動植物の生理に重要な役割を示し,カリウム塩はカリ肥料として重要。工業的には苛性カリの融解電解によってつくる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カリウム」の意味・わかりやすい解説

カリウム
potassium

元素記号 K ,原子番号 19,原子量 39.0983。天然にはカリウム 39 (存在比 93.10%) のほかカリウム 40,カリウム 41が存在し,カリウム 40は放射性同位体である。天然にはおもに長石,雲母などの成分として分布している。カリウムイオンは土壌中に吸着されて多量にかつ広く分布し,植物の灰中にも比較的多く含まれている。周期表1族に属し,アルカリ金属の1つである。イオン化エネルギーが小さく,1価の陽イオンをつくる。単体は軟らかい銀白色の金属。融点 63.65℃,比重 0.862。化学的には非常に活性で,水,酸素,酸と激しく反応する。水と反応すると水素を発生し,水酸化カリウムを生成する。活性水素をもつ有機化合物とも反応する。カリウム塩の合成,有機合成に使用される。またナトリウム-カリウムの合金は原子炉の冷却材としての用途がある。

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「カリウム」の解説

カリウム【Kalium】

主要ミネラルのひとつ。元素記号はK。ナトリウムに似た性質をもち、ナトリウムとともに体液を構成する主要成分。アボカドなどの果物類、緑黄色野菜、芋類、海藻類、いわし、大豆などに多く含まれる。体重1kgに対して2gのカリウムが存在し、生命活動を維持するうえで重要な役割をもつほか、細胞内外液の浸透圧の維持、筋肉の活動促進、腎臓の老廃物の排泄補助、高血圧予防などの作用をもつ。

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食の医学館 「カリウム」の解説

カリウム

ナトリウムとともに細胞内外の物質交換や水分調節を行います。血圧上昇の抑制、筋肉の収縮の円滑化にも関与しています。不足すると高血圧、不整脈、手足のしびれなどをまねきます。コンブ、アボカド、エダマメ、スルメ、サトイモ、サツマイモ、インゲンマメなどに多く含まれています。成人1日あたりの目安量は男性3000mg、女性2600mg、上限はとくにありません。

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栄養・生化学辞典 「カリウム」の解説

カリウム

 原子番号19,原子量39.0983,元素記号K,I族(旧Ia族)の元素.アルカリ金属の一つ.生物の必須元素で,細胞内に多く分布する.浸透圧の調節や酸塩基平衡に重要な生理的意義がある.ヒト血液のカリウムイオンの正常値は3.5〜5.0meq/l

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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