カリフォルニア(読み)かりふぉるにあ(英語表記)California

翻訳|California

精選版 日本国語大辞典 「カリフォルニア」の意味・読み・例文・類語

カリフォルニア

(California) アメリカ合衆国西南部、太平洋岸の州。州都サクラメント。一八四八年メキシコから割譲、一八五〇年に三一番目の州となる。ブドウ、ナシ、レモンなどの果実やサトウダイコンの産額は合衆国一。石油の採掘、航空機・ミサイル工業が盛ん。加州。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリフォルニア」の意味・わかりやすい解説

カリフォルニア
かりふぉるにあ
California

アメリカ合衆国西部、太平洋岸の州。別称ゴールデン・ステート。面積41万1013平方キロメートルで、日本の約1.1倍にあたる。人口3387万1648(2000国勢調査速報値)。南北約1250キロメートルと細長く、北半分の中心がサンフランシスコ、南半分の中心がロサンゼルスである。州都はサクラメント。コースト山脈とシエラ・ネバダ山脈が並行し、その間にカリフォルニア盆地が挟まる。コースト山脈のほぼ中央に開口部が太平洋に向かって開き、沈水してサンフランシスコ湾を形成している。シエラ・ネバダ山脈の南端に位置するホイットニー山(4418メートル)はアラスカを除く合衆国の最高峰で、その南東にあるデス・バリー(死の谷)は海面下85メートルで合衆国でもっとも標高の低いところである。シエラ・ネバダ山脈には環太平洋火山帯が重なり、シャスタ山(4317メートル)、ラッセン・ピーク(3187メートル)などの火山がある。気候は、北半の西岸海洋性、南半の地中海性、山岳高地の高山、南部のステップ・砂漠の4気候区をもつ。変化に富む地形と多様な気候によって、多彩な動植物相と自然景観がみられ、ヨセミテ、キングズ・キャニオン、セコイア、ラッセン・ボルケニック、レッドウッドの5国立公園のほか、自然保護区や州立公園も多く、観光の州としても著名である。

 第二次世界大戦後の太平洋時代に入ってからの発展は著しく、いまや合衆国でもっとも力のある州となった。人口は、1920年には全米第8位であったが、1940年には2位となり、1970年にはニューヨーク州を抜いて1位となった。2000年の人口3387万余はカナダの全人口より多い。州の製造品出荷額は3796億ドル(1997)で、全米の10分の1に相当する。農業では、コロラド川総合開発などによって灌漑(かんがい)施設が整ってから生産力が飛躍的に向上し、冷蔵・輸送技術の進歩と相まって、現在野菜と果樹の生産で全米第1位を占める。なかでもブドウ、オレンジ、レモン、モモ、プラムなどで群を抜き、米、トマト、レタスなども全米の市場へ送られる。酪製品、肉牛でも首位で、牛乳、綿花、鶏肉、シチメンチョウなども上位である。工業においても、前述の製造品出荷額のほか従業員数、付加価値生産額のいずれの分野でも第2位のニューヨーク州を大きく引き離しており、全米のほぼ10%を占める。主要製品は航空機、自動車、電気機器、食品である。サン・ホゼ市を中心とするサンタ・クララ谷には航空機のロッキード社、電算機のIBM社、自動車のフォード社、電気機器のGE社などの主力工場が集積しているが、近年はさらにIC、LSIなど電子工業の先端部門の成長が著しく、シリコンバレーとよばれ、世界一の高度技術集積地帯として注目を集めている。カリフォルニア州立大学、スタンフォード大学など水準の高い研究教育機関の果たしている役割も大きい。鉱業は総生産額でテキサス州に次いで第2位である。石油はテキサス州、アラスカ州ルイジアナ州に次いで4位であるが、アスベスト、ホウ素、ナトリウム鉱、タングステン鉱などで第1位のほかセメントも首位にあり、種類が豊富である。林業も重要産業で、国有林面積ではアラスカ州に次ぐ。

 1984年に二度目のオリンピック開催地となったロサンゼルスは、ニューヨークに次いで人口全米第二の大都会で、サンフランシスコも12位である。サンフランシスコは太平洋岸の良港で、ロサンゼルスも人工港をもち、ともに合衆国の太平洋への門戸として繁栄し、日本との関係も深い。映画の都ハリウッドや高級住宅街のビバリー・ヒルズ、青い海で若人に人気のサンタ・モニカもこの州にある。住民はメキシコ系のほか、日本人、中国人など東洋人も多く、カリフォルニア農業の発展に日本人移民の果たした役割は大きかった。サンフランシスコのチャイナタウン、ロサンゼルスのリトル・トーキョーなどに人種・文化の混合の典型をみることができる。

[伊藤達雄]

歴史

1542年スペイン帝国の航海士フアン・ロドリゲス・カブリリョJuan Rodríguez Cabrillo(?―1543)が今日のカリフォルニア州にあたる海岸線を航海した。それから200年以上を経た1769年、スペイン王の命によりガスパー・デ・ポルトラGaspar de Portolá(1723?―1784?)は伝道士と兵士を率いてカリフォルニアの本格的植民に着手し、インディアンを支配下に置きながら伝道区を設置した。他方、北方からはロシア帝国の商人が毛皮取引を求めて南下し、1812年にはサンフランシスコの近郊にフォート・ロスFort Rossを建設した。1822年メキシコ共和国のスペイン帝国からの独立に伴いメキシコ領となるが、1848年メキシコ戦争(1846~1848)によるグアダルーペ・イダルゴ条約の結果、アメリカ合衆国の領土となる。同じころシエラ・ネバダ山脈で金鉱が発見され、ゴールド・ラッシュが起こり、人口が急増し、1850年には第31番目の自由州として連邦に加盟が認められた。

[庄司啓一]


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改訂新版 世界大百科事典 「カリフォルニア」の意味・わかりやすい解説

カリフォルニア[州]
California

アメリカ合衆国太平洋岸の州。略称Calif.。連邦加入1850年,31番目。面積41万1013km2(全米3位)。人口3725万3956(1位,2010)。州都はサクラメント,最大都市はロサンゼルス。州名は伝説上の楽園に由来し,16世紀スペインの作家モンタルボの騎士道物語に,アマゾンの女王カラフィアの住む島として登場する。1848年に米墨戦争の結果,合衆国領となる。太平洋岸南部を占め南境でメキシコに接する広い州で,自然環境の多様性は著しい。主として岩石海岸からなる太平洋岸に沿ってコースト・レーンジズ(海岸山脈)が走り,内陸に連なるシエラ・ネバダ山脈との間には,長さ700km,幅100~200kmのセントラル・バレーが広がり,肥沃な農業地帯をなす。北部は多雨で森林に恵まれるが,南部にはモハーベ砂漠や,コロラド砂漠の一部を占めるインペリアル・バレーと湖面高度海面下73mのソルトン湖がある。ホイットニー山(4418m)を最高峰とするシエラ・ネバダ山脈の南東には,盆地床で北アメリカの最低点(標高-86m)をなすデス・バレーがある。都市化,農業化が進んでいるが,ヨセミテ,キングズ・キャニオン,セコイアなどの国立公園をはじめとして大自然はよく保護されており,シエラ・クラブのような環境保護団体の活動が盛んである。

 カリフォルニアの開発は,短期間に急速に行われてきた。とくに1848年に始まったゴールドラッシュ,さらに69年の大陸横断鉄道開通後は移住者が急増し,20世紀に入ってからは南カリフォルニアでオイルブームがおこった。また,快適な地中海式気候は,楽園的イメージをもつ〈ゴールデン・ステート〉として,国の内外から人々をひきつけ,社会的・文化的多様性が生じてきた。若者を中心とした風俗・文化の先進地域であるとともに,老齢人口の流入も大きい。民族的多様性も大きく,とくに400万以上のメキシコ系住民をもつ一方,19世紀後半以来中国人をはじめとして日本人,フィリピン人,朝鮮人などのアジアからの移民も多い。日系人はハワイに次いで多く,とくにロサンゼルス地域とサンフランシスコ湾岸に集中がみられる。日系企業の進出も著しく,貿易・観光を通じ日本との関係は密である。

 州経済の水準は高く,あらゆる産業がよく発達し,その総生産は独立した国家に匹敵する。ロサンゼルスを中心とした宇宙航空関連産業やシリコン・バレーの電子産業をはじめ,石油精製,食品加工,金属,機械,電子機械,化学などの工業が各地にみられる。ロサンゼルス一帯とセントラル・バレー南部は石油の大産地(全米4位)でもある。都市化,工業化が進んでいる一方,カリフォルニアは農業州としての性格を強くもつ。早くから灌漑が進められ,豊かな太陽光線と合理的な農法によって,野菜(1位)やかんきつ類その他の果樹,また綿花(2位),麦類,牧草(3位),テンサイなどの生産高が大きい。セントラル・バレー・プロジェクトをはじめとする水利事業によって水の有効利用が図られ,広大な乾燥地域の開発が進んでいる。カリフォルニアは西部の経済・文化の中心であるばかりでなく,あらゆる面でアメリカの先端をいく地域とみられている。
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デジタル大辞泉プラス 「カリフォルニア」の解説

カリフォルニア〔戦艦〕

《California》アメリカ海軍の戦艦。テネシー級の超弩級戦艦。船体識別番号はBB-44。1919年進水、1921年就役。就役から1941年までの20年間にわたり、太平洋艦隊旗艦をつとめる。1941年の日本軍による真珠湾攻撃により損害を受け、修理兼近代化改装を受ける。サイパン島の戦い、レイテ沖海戦などに参加。1947年退役。1959年、スクラップとして売却。

カリフォルニア〔自動車〕

イタリアのフェラーリが2008年から製造、販売している乗用車。2ドアクーペのオープンカー。4人乗り。DOHCのV8エンジンを搭載。

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旺文社世界史事典 三訂版 「カリフォルニア」の解説

カリフォルニア
California

アメリカ合衆国の太平洋岸にある州
メキシコ領であったが,1848年アメリカ−メキシコ戦争の結果,合衆国の領土となった。その直後に金鉱が発見され,フォーティーナイナーズ(49-ers)と呼ばれる移住者が翌1849年から殺到し,ゴールド−ラッシュを招いた。1850年,州に昇格。現在全米3位の面積の州となり,ハリウッドのあるロサンゼルスが最大都市である。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カリフォルニア」の解説

カリフォルニア
California

アメリカ太平洋岸の1州。1848年アメリカがメキシコから獲得した直後に金が発見されたため,人口が急増し,50年には州となった。現在はアメリカ最大の人口を持ち,在来の農工業に加え先端技術産業が「シリコンヴァレー」を中心に発展している。メキシコ系,アジア系住民の増大が特に州の南部で著しい。

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世界大百科事典(旧版)内のカリフォルニアの言及

【アメリカ】より

…アメリカ合衆国の東半分は湿潤温暖気候で,合衆国の主要農業地帯となっている。合衆国の太平洋岸南部はカリフォルニア海流(寒流)の影響で夏の気温が高くならず,季節風の影響も少ないため,冬の気温も温和で,年間を通じて温和な地中海式気候を示す。カリフォルニア州北部からアラスカ南部の太平洋岸は北太平洋海流と偏西風の影響を受けて降水量が増加し,高緯度にもかかわらず冬が比較的温暖な西岸海洋性気候となる。…

【アメリカ・インディアン】より

… パレオ・インディアン文化よりもさらに古い先史文化の存在は,各種の資料に基づいて主張されてきた。たとえば,A.D.クリーガーによる〈先尖頭器文化〉,L.S.B.リーキーらによるキャリコ山(アメリカ合衆国カリフォルニア州)の旧石器,W.N.アービングらによるオールド・クロー盆地(カナダ,ユーコン・テリトリー)の古い骨角器の存在などがその根拠とされてきたが,いずれも全研究者を納得させる資料とはいい難い。そのなかで,北アメリカ東部ペンシルベニア州のメドークロフト岩陰遺跡出土の資料は,石刃技法による石刃,尖頭器の製作に特徴づけられる。…

【アメリカ合衆国】より

…さらに,宇宙開発関連(フロリダ州やテキサス州)やエレクトロニクス関係などの産業の拡大,冷房機器,プールなどの生活環境の改善が進むにつれ,人口流入は激増した。70年代には南部からカリフォルニア州にかけての本土南半部は,北半部〈スノー・ベルト〉に対して〈サン・ベルト〉と呼ばれ,その勃興が注目されるようになった。【正井 泰夫】
【地誌】
 多様な自然条件と歴史的条件のもとに発展したアメリカ合衆国は,政治的・経済的さらに文化的視点からながめた場合,地域間にかなりの差異が認められる。…

【キノ】より

…1681年5月ヌエバ・エスパニャに渡り,現在のメキシコのソノーラ州北部とアメリカのアリゾナ州南部一帯の原住民オオタム族,通称ピーマ族の間で宣教,彼らの定住化と帰順に大きな成果を挙げた。この間,各地を探検し,1700年の秋にコロラド川の河口を発見して,カリフォルニアが半島であることを確認した。なお,姓キノの元の形はキニChiniである。…

※「カリフォルニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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