カリマコス(英語表記)Kallimachos

精選版 日本国語大辞典 「カリマコス」の意味・読み・例文・類語

カリマコス

(Kallimachos) 古代ギリシア学者、詩人。アレクサンドリア図書館整備に尽くし、最初の本格的な文学史ともいうべき「ピケナス(目録)」一二〇巻を著わす。詩に「ヘカレー」「賛歌」。(前三〇五頃‐前二四〇頃

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デジタル大辞泉 「カリマコス」の意味・読み・例文・類語

カリマコス(Kallimachos)

[前310ころ~?]古代ギリシャの詩人。アレクサンドリアの図書館の司書として、「大目録」120巻を作成。詩論家としても活躍し、作「アイティア」などの断片が残っている。

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改訂新版 世界大百科事典 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス
Kallimachos

ヘレニズム文学を代表する文学的貢献をなした前3世紀アレクサンドリアの詩人,学者。生没年不詳。北アフリカキュレネで生まれ,若くしてアレクサンドリアに移り住み,郊外エレウシスで教師生活を営み,後アレクサンドリア図書館に職を得,その間にそれまでにギリシア語でつづられたほとんどすべての文献を網羅して文学史的に整理した《大目録》を完成した。文学作品の規模と質をめぐる文芸学上の問題で,弟子のロドスアポロニオスと鋭く対立し,論争に敗れたアポロニオスはロドスに退いたと伝えられる。ローマの詩人オウィディウスの《イビス》は,カリマコスが自分の論敵を揶揄(やゆ)攻撃するために著した詩を模したものである。

 彼の詩文や散文著述は800巻を満たしたと伝えられるが,中世写本の形で現存するのは《賛歌》と《碑詩》のみであり,彼の名を〈エレゲイア詩の王者〉と高からしめた《縁起詩集》その他のものは,パピルス断片としてわずかに知られているにすぎない。《大目録》をはじめ,《アテナイ劇作家年譜》《デモクリトス研究》その他数多くの散文著述はことごとく散逸した。彼の詩風は,技巧,学殖の点で,他の諸詩人の追随を許さぬ洗練度に達しているが,しかし人情機微をうがつユーモアや人間理解にも満ちており,彼の金言名句を引用しているヘレニズム時代のパピルスは古典期の人気作家エウリピデスよりも数においては多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス
Kallimachos

[生]前310頃.キュレネ
[没]前240頃
ギリシアの詩人,文献学者。アレクサンドリア時代の典型的な学者詩人で,著書は 800巻。図書館のカタログ編者として 120巻の文献史『目録』 Pinakesを編纂,これはギリシア最初の科学的文学史。長大な詩を大悪として小詩を主張,ロドスのアポロニオスと論争した。完全な形で現存するのは賛歌 6編とエピグラム 63編。代表作はエレゲイアによる『アイティア』 Aitia (4巻) 。ほかにイアンボス,弔詩,エピュリオン『ヘカレ』 Hekalē,アポロニオスをからかった『イビス』 Ibis,ローマのカツルスの翻案によって知られる頌詩『ベレニケの髪』 Coma Berenicesなど。彼の文芸理論は共和政末期から帝政初期のローマの詩人たちによって全面的に受入れられ,ラテン黄金文学の血肉と化した。

カリマコス
Kallimachos

[生]?
[没]前490
古代ギリシア,アテネポレマルコス (軍事指揮官) 。前 490年マラトンの戦いの総司令官をつとめ,最終段階で戦死。彼の戦功はミルチアデスの陰に隠れているが,アテネのストア・ポイキレーの壁画に神々と英雄の間に彼の容姿が描かれており,また2つの短詩によって認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス
かりまこす
Kallimachos
(前310ころ―?)

古代ギリシアの詩人、学者。アフリカのキレネの出身。アレクサンドリアの図書館の司書となり、プトレマイオス2世の恩顧を受けた。学者としては、ギリシアのあらゆる学問分野における優れた業績を整理分類し、これを120巻からなる目録にまとめ、劇詩人などの研究や数種類の辞典を著した。彼の詩は、賛歌、エレゲイア詩、イアンボス詩、小叙事詩、短詩(エピグラム)など広い領域にわたっていた。写本に伝わるのは賛歌と短詩のみであるが、そのほかに多数のパピルス断片が発見されている。

 代表作は各地の祭礼や習俗の縁起を歌った『アイティア』4巻(断片残存)。そこには技巧的な構成や変化に富む詩句、神話・歴史・地誌などの学問的考証がみられる。彼は磨かれた小品を重んじ、長大な叙事詩を痛烈に批判した。また文学理論をめぐり弟子のアポロニオスと論争したといわれる。ローマの詩人にも大きな影響を与えた。

[岡 道男]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カリマコス」の解説

カリマコス
Kallimachos

前305頃~前240頃

ヘレニズム時代の偉大な文献学者,詩人。キュレネの人。アレクサンドリアムーセイオン付属図書館蔵書目録120巻をつくり,詩ではエピュリオン(小叙事詩)の形式を唱えて,ローマの抒情詩に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス

前3世紀アレクサンドリアの詩人。北アフリカのキュレネ出身。アレクサンドリア図書館の司書を務めた博学者で,《大目録》など文学史的な著作もある。小叙事詩,頌詩(しょうし),短詩に完璧(かんぺき)の技巧を示し,ヘレニズム文学を代表,ローマ詩人にも大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内のカリマコスの言及

【ギリシア文学】より

…しかしヘレニズム期の詩人たちは山野や田園や都市の一隅を彼らの宇宙と見立てて,そこに文芸的造詣深く,情緒細かい人間理解が交わる文学の世界を築く。ロドスのアポロニオス,キュレネのカリマコスは,互いに文学観を異にしたと伝えられるけれども,共通するところもまた著しい。2人の深い学識と詩的洞察によって,森や泉,古い神々のほこらやひなびた祭祀,またそれらのいわれを伝える縁起譚が田園の神話となってよみがえる。…

【分類】より

…17世紀初頭に新しい学問や技術の発展をふまえてF.ベーコンが新しい分類(図3)を始め,フランスの《百科全書》(図4)に引きつがれたが,19世紀にA.コントが歴史的,論理的順序による分類(図5)を提唱して,これが現在も大学の教科編成や図書の分類に用いられている。劇を喜劇,悲劇,頌歌に分類したのは前3世紀の詩人カリマコスであるが,彼はアレクサンドリアの図書館司書だったので,図書目録のための分類であった。中国では学問の分類も図書の分類によったので,経,史,子,集の〈四部〉や集,六芸,諸子,詩賦,兵書,術数,方技の〈七略〉が用いられた。…

【ラテン文学】より

…政治に希望を失った青年たちの中に,一種の芸術至上主義的な文学改革運動に取り組む一群の詩人が現れた。〈新詩人〉と呼ばれるこれらの詩人は,アレクサンドリア派のカリマコスらの作風と理論を初めて意識的にローマに取り入れて,先輩たちの長いだけでしまりのない詩を批判し,洗練と技巧と学識と〈小さい完成〉を目ざした。彼らの中で特に才能に恵まれたカトゥルスの作品だけが今日まで残存した。…

【アポロニオス[ロドスの]】より

…このため〈ロドスの人Rhodios〉と呼ばれる。長編詩と短編詩の是非をめぐる師カリマコスとの激しい文学論争は当時の有名な事件として伝えられている。《アルゴナウティカ》は長編詩を嫌う当時の傾向を押し切って書かれた。…

※「カリマコス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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