カンジタ症

内科学 第10版 「カンジタ症」の解説

カンジタ症(真菌症)

概念
 酵母であるCandida albicans,C. tropicalis,C. par­apsilosis,C. glabrata,C. kruseiなどのカンジダ属菌による感染であり,このうちC. albicansが約50%を占めるが,近年はnon-albicans Candida (C. albicans以外のカンジダ属菌)が増加しつつある.C. albicansは感染すると酵母から仮性菌糸を伸ばし,糸状菌に類似した形態を示す.カンジダ症は剖検時におけるわが国の深在性真菌症としては,アスペルギルス症についで多い.
感染経路・病態・病型
 皮膚粘膜感染(皮膚粘膜カンジダ症)と深部臓器への感染(深在性カンジダ症)とに大別される.カンジダ属菌は口腔内,腸管内,腟内,皮膚などの常在菌として広汎に生息している.このため,カンジダに対する物理的防衛線を担っている皮膚・粘膜の破綻や細胞性免疫,粘膜免疫システムの障害,好中球の減少・機能障害などにより感染に至る.
1)皮膚粘膜カンジダ症:
口腔粘膜の感染には鵞口瘡(thrush)を代表とする口腔カンジダ症(oral candidiasis)が,皮膚カンジダ症(cutaneous candi­diasis)としては爪炎,間擦疹,肛門周囲炎などがある.特殊な病態として,カンジダが皮膚,粘膜に慢性的・持続的に感染する慢性粘膜皮膚カンジダ症(chronic mucocutaneous candidiasis:CMCC)が知られている.なお,皮膚粘膜カンジダ症の危険因子としては新生児,悪性腫瘍などがあるが,特に口腔カンジダ症はHIV感染に伴う感染症としてみられることがある.
2)深在性カンジダ症:
さまざまな病型があるが,食道の粘膜に感染する食道カンジダ症(esophageal candidiasis)と,血液を含む実質臓器に感染する場合とが代表的であり,後者ではカンジダが血中に侵入し(カンジダ血症,candidemia),血流に乗ってさまざまな臓器に定着して病巣を形成するのが一般的である.血中に侵入する経路としては,①中心静脈カテーテルなどの血管内留置カテーテルを介して皮膚から侵入するもの,②腸管に常在しているカンジダが,抗癌薬などの投与によって破綻した腸管粘膜から侵入するものの2種が主要な経路である.後者では好中球数が減少しているため,感染はさらに容易になる.深在性カンジダ症の標的となる臓器としては肝,腎などが多く,しばしば多発性の膿瘍を形成するが,その他,心内膜炎,髄膜炎などあらゆる臓器に感染し得る.眼内炎も多く失明に至る場合もあり,カンジダ血症では特に注意する必要がある.危険因子として,食道カンジダ症ではHIV感染が,実質臓器の感染では留置カテーテル,抗癌薬投与,好中球減少などがあげられる.なお,食道カンジダ症はAIDSの指標疾患である.
臨床症状・検査成績・診断
 口腔内カンジダ症では白色の隆起性病変がみられる.食道カンジダ症では同様の粘膜病変に加えて嚥下障害,胸骨後痛などが出現する.カンジダ血症やその他の深在性カンジダ症では,一般抗菌薬無効の発熱で発症することが多い.診断は血液などからの菌の培養同定,病理組織などにより行うが,喀痰中には口腔内に常在するカンジダが混入するため,結果の解釈は慎重に行う.血清を用いたカンジダ特異抗原の検出や(1→3)-β-d-グルカンも有用であるが,後者はほかの多くの真菌症でも陽性となり,カンジダ症に特異的な診断法ではない.
治療
 皮膚粘膜感染では抗真菌薬の局所投与が中心である.食道カンジダ症や深在性カンジダ症では,アゾール系,キャンディン系,アムホテリシンBなどの抗真菌薬を用いる.皮膚粘膜感染の予後はおおむね良好だが,内臓感染の場合,重篤度,基礎疾患により大きく左右され,全身播種では概して不良である.[亀井克彦]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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