カール・ビンソン(読み)かーる・びんそん(英語表記)Carl Vinson

知恵蔵 「カール・ビンソン」の解説

カール・ビンソン

米国海軍の原子力空母。全長333メートル、最大幅77メートル、満載排水量は10万トンを超える。兵員など約5000人が搭乗可能で、搭載機は戦闘攻撃機などを中心に60機以上になる。同艦1隻で中小国の空軍力を凌駕(りょうが)し、洋上の要塞都市とも称される。2011年にアルカイダの司令官オサマ・ビン・ラディンの遺体インド洋に遺棄したことでも知られている。
1960年代から2000年代にかけて10隻が建造されたニミッツ級航空母艦の3番艦で、その名は海軍の発展に尽力した下院議員にちなむ。1980年に進水、82年から就役し、太平洋艦隊のうち東太平洋を管轄する第3艦隊に所属している。母港は、カリフォルニア州サンディエゴにあるコロナド海軍基地のノースアイランド海軍航空基地。同艦搭載機で、空対空戦闘や空爆主力となる戦闘攻撃機FA-18E/Fスーパーホーネットは、限定的ながらもステルス機能を有し、1000ポンド爆弾を4発搭載して1000キロメートル以上の戦闘行動半径を有する。カール・ビンソンは、同機やFA-18ホーネットを合わせて4個飛行隊約50機搭載するほか、空飛ぶレーダー基地と呼ばれる早期警戒機E-2Cや交戦相手のレーダーなどを無力化する電子戦機EA-18Gなども擁する。同艦空母のほか、イージス艦として、トマホークミサイル各100発前後を搭載したミサイル巡洋艦ミサイル駆逐艦をそれぞれ数隻ずつ随伴し、原子力潜水艦数隻なども合わせてカール・ビンソン空母打撃群を構成する。これらを総動員して数日間にわたる攻撃を行えば東京大空襲に匹敵する被害を及ぼせるとされる。
カール・ビンソン空母打撃群は、太平洋艦隊第7艦隊の横須賀基地(米軍横須賀海軍施設)を母港とする原子力空母ロナルド・レーガンがメンテナンスに入ったことなどから、2017年には展開区域を東太平洋から西太平洋方面に移した。北朝鮮の弾道ミサイルや核実験に対する懸念から、米国トランプ大統領が4月に「非常に強力な艦隊を送り込む」と声明を出し、日本を含む同盟各国との演習や訓練を繰り返しながら同打撃群は朝鮮半島近海を航行している(2017年5月時点)。

(金谷俊秀 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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