ガゼル(英語表記)gazelle

翻訳|gazelle

精選版 日本国語大辞典 「ガゼル」の意味・読み・例文・類語

ガゼル

〘名〙 (gazelle) ウシ科ガゼル属およびチベットガゼル属の哺乳類の総称。アフリカアラビア半島インドモンゴルまでの乾燥地帯に広く分布し、十数種がある。肩高五〇~一〇〇センチメートル。体形は繊細優美で、四肢が細く、雄は輪のある竪琴形の角をもつ。雌は角をもたないか、もっていても小さい。体色はふつう砂色で顔や体側に暗色帯がある。最もふつうに見られるのは小形種のトムソンガゼルで、肩高約六四センチメートル。草などを食べ、走るのが速く、跳躍力も大きい。

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デジタル大辞泉 「ガゼル」の意味・読み・例文・類語

ガゼル(gazelle)

ウシ科ガゼル属などのレイヨウの総称。体も四肢も細く、走るのが速い。雌雄とも角をもつ。肩高約70センチのトムソンガゼル、約1メートルのグラントガゼルなどがあり、アフリカからモンゴルの草原や砂漠にすむ。→羚羊れいよう

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改訂新版 世界大百科事典 「ガゼル」の意味・わかりやすい解説

ガゼル
gazelle

四肢が細く目が大きい小型の偶蹄目ウシ科ガゼル属に属する哺乳類の総称。アフリカ,アジアの主として砂漠地帯にすむ。アンテロープの中でもっとも姿の優美な仲間で,体長80~165cm,肩高50~120cm,ふつう体の上面が砂色(淡黄褐色)で下面が白く,多くは両部の境に暗色の一帯がある。また目の上から吻(ふん)側を上唇にかけて走る顕著な白帯を見ることが多い。吻端はヒツジのように毛で覆われていて裸出した鼻鏡がなく,前肢の手根部(ひざのように見える部分)には毛の房があり,短い尾の先半分にも暗色の毛の房がある。角はふつう雄雌ともにあり,ハープ形またはS字状に曲がりながら後上方にのび,その基半部には顕著な節状の輪が多数ある。上あごの臼歯(きゆうし)はヒツジに似て幅が狭く,多くは目の前下方に臭腺(眼下腺)がある。乳頭は1対。

 スーダンエチオピアソマリアに分布するゼンメリングガゼルGazella soemmeringi(肩高85~92cm),エチオピアからタンザニアまで分布するグラントガゼルG.granti(肩高80~95cm),サハラ南西部のダマガゼルG.dama(肩高90~120cm),スーダンからタンザニアにかけて分布するトムソンガゼルG.thomsoni(肩高55~65cm),サハラからインド中部まで分布するドルカスガゼルG.dorcas(肩高55~65cm),サウジアラビアとイスラエルに分布するマウンテンガゼルヤマガゼルG.gazella(肩高60~80cm),サウジアラビアからパキスタンおよびモンゴルに分布するコウジョウセンガゼルG.subgutturosa(肩高60~80cm),チベットの3900~5400mの高地にすみ,冬毛が長く羊毛状のチベットガゼルProcapra picticaudata(肩高60~66cm)など,2属約17種がある。これらのうちコウジョウセンガゼルの雌にはふつう角がなく,雄は交尾期になるとのどの一部が膨らんで甲状腺がはれたように見える。チベットガゼルの雄も同様にのどが膨れる。

 ガゼルは砂漠や乾燥した草原を好み,水の欠乏に強く,食物とする軟らかい草,低木の葉や芽から得る水分だけで過ごすことができる。ダマガゼルは乾季にはスーダンで10~30頭の小群でくらすが,雨季には北方のサハラまで移動し100頭,ときには200頭もの大群をなす。これに対してグラントガゼルは乾季に200~400頭もの大群をなし,雨季に小群に分かれるといわれる。一般に交尾期が近づくと雄は攻撃的になり,他の雄だけでなく同大までの草食獣をすべてテリトリーから追い出し,5~20頭の雌を従える。テリトリーは直径500m~2kmで,その境は尿や糞でマークする。コウジョウセンガゼルは4~5月にふつう2子,ときに3~4子を生むが,アフリカのガゼルでは1腹1子まれに2子で出産期も不定のものが多い。アフリカでは最大の天敵はチーターで,不用意に200mまで接近されると,時速60km以上で走れるガゼルも,まず逃げられない。なお,以上のほか南アフリカ共和国のスプリングボックAntidorcas marsupialis,ソマリアとエチオピアのディバタグAmmodorcas clarkeiおよびアフリカ東部の首の長いジェレヌクLitocranius walleriの3種をもガゼルに含めることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガゼル」の意味・わかりやすい解説

ガゼル
がぜる
gazelle

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科ガゼル属に含まれる動物の総称。この属Gazellaのアンテロープ(レイヨウ)は、アフリカだけでなくアラビア半島、シリア、アフガニスタン、イラン、パキスタン、インド、チベット北部およびモンゴルまで広く分布する。生息地も変化に富み、サバナから荒れ地や砂漠まであり、十数種が知られている。体は細く優美で、四肢も細く長い。通常は砂色の体色で、多くは顔や体側に暗色帯がある。雌雄ともに角(つの)があり、横からみると始め後方に曲がり、先のほうはわずかに前方あるいは上方に曲がり、前方からみると竪琴(たてごと)形である。角の長さは種によって異なる。いずれの種も乾燥した地域に適応し、水がなくても長期間生存できる。夕刻または早朝に、普通は草を食べるものが多いが、砂漠地帯にすむものは小低木の葉なども食べる。単独で生活するもの、2頭から30頭ほどの小群でいるもの、あるいは大群をなすものなど、その生活様式はいろいろである。普通、子は草などの植物が多い4~6月に産まれる。1産1子。寿命は10~12年ほどである。体は小さいが走るのは速く、時速64~96キロメートルに達するといわれ、ジャンプも巧みである。ガゼル類は次の三つのグループに分けられる。

(1)体は大形で、臀部(でんぶ)の白色部が大きく、尾の付け根だけでなく、腰の後部にまで達するグループ。グラントガゼルG. granti(肩高80~100センチメートル、角長30~80センチメートル、東アフリカの草原に分布)、ダマガゼルG. dama(ガゼル類中最大で肩高90~120センチメートル、角長16~41センチメートル、アフリカ西部から北部の砂漠に分布)など。

(2)体は中形ないし小形で、臀部の白斑(はくはん)は小さく、尾の付け根までしかないグループ。ドルカスガゼルG. dorcas(肩高50~70センチメートル、角長16~38センチメートル、アフリカ北東部から中近東の砂漠に分布)、トムソンガゼルG. thomsoni(肩高55~70センチメートル、角長7~43センチメートル、東アフリカの草原に分布)など。

(3)中形で白斑は前者と同じであるが、普通は雌に角がないグループ。このグループはコウジョウセンガゼルG. subgutturosaだけで、雄ののどは繁殖期に膨れる。肩高60~80センチメートル、角長25~43センチメートル。モンゴルからアフガニスタンの平原に分布する。

[今泉忠明]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガゼル」の意味・わかりやすい解説

ガゼル
gazelle

偶蹄目ウシ科のなかのアンテロープの一群で,GazellaProcapraの2属に属する動物の総称。体長1~1.2m,体高 1m内外。眼の上部から鼻にかけて明るい縞がある。走るのも速い。トムソンガゼルダマガゼルマウンテンガゼルチベットガゼルモウコガゼルなど多くの種がある。モンゴル,南アジアからアフリカ北東・中央部の平地から標高 5000mぐらいまでの地域に分布し,木の茂らない草原にすんでいる。

ガゼル
SH-08 Gazelle

ソ連が 1984年からモスクワ周辺に配備を開始したサイロ式短射程弾道ミサイル迎撃ミサイルABM。当初ガロシュ ABMとともに配備され,80年代末からはゴルゴン・ミサイルとともに配備されている。これら長射程のミサイルが撃ち漏した目標を迎撃する。ゴルゴン・ガゼル両ミサイルの組合せを ABM-3と呼ぶ。主要目は,射程 80km,全長 10m,直径 1m,発射重量 10t,推進方式2段式固体燃料,弾頭威力 10kt核弾頭 (通常型弾頭も開発中) 。

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