改訂新版 世界大百科事典 「キトラ(亀虎)古墳」の意味・わかりやすい解説
キトラ(亀虎)古墳 (きとらこふん)
奈良県明日香村阿部山にある古墳時代終末期の古墳。西にのびる尾根の南斜面にあり,終末期古墳に典型的な景観を示す。未発掘で,内部構造は明らかでないが,墳丘は直径約11m,高さ約4mの円墳をなし,規模は高松塚古墳よりやや小さい。しかし1983年ファイバースコープによって石槨北壁に高松塚古墳壁画によく似た玄武(げんぶ)の描かれていることが知られ,他の四神などの画像の有無は不明であるが,その位置が高松塚古墳のほぼ真南で,やはり藤原京中軸線の南への延長線に近いことから注目を集めている。被葬者は現段階ではもちろん推測も困難であるが,古墳の所在地が〈阿部山〉であることから,703年(大宝3)69歳で没した右大臣阿倍御主人(みうし)とする説が提唱されている。
執筆者:岸 俊男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報