日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
キャンベル(William C. Campbell)
きゃんべる
William C. Campbell
(1930― )
アメリカの生物学者、生化学者、寄生虫学者。アイルランド生まれ。1954年トリニティカレッジ卒業、1957年ウィスコンシン大学マディソン校で博士号取得。同年から1990年までメルク社医薬研究所の研究員として勤務した。ドルー大学名誉研究フェロー。
キャンベルは、1974年(昭和49)に北里研究所の大村智(さとし)が発見した放線菌が産生する化学物質エバーメクチンについて研究。寄生虫を植えたマウスにエバーメクチンを投与し抗寄生虫作用があることを発見。その後、抗寄生虫の動物による実験系を確立した。さらに大村らと共同研究を進め、ウシやウマなどの家畜動物の寄生虫やダニなどを駆除する動物抗生物質を開発した。また、ヒトの抗寄生虫作用と安全性を確認する研究を進め、ヒトの医薬特性に優れたイベルメクチンを開発した。イベルメクチンは熱帯性寄生虫疾患であるオンコセルカ症(河川盲目症)、リンパ系フィラリア症、糞(ふん)線虫症、疥癬(かいせん)などの特効薬となり、年間約3億人の人々の予防・治療薬となっている。
2015年「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」の業績で、北里大学特別栄誉教授の大村智とともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成 2016年5月19日]