キュリオシティ(読み)きゅりおしてぃ(英語表記)Curiosity

翻訳|Curiosity

知恵蔵 「キュリオシティ」の解説

キュリオシティ

アメリカ航空宇宙局(NASA)によって2011年11月に打ち上げられた無人火星探査車の愛称で、12年8月に火星に着陸した。正式名称は「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL、Mars Science Laboratory)」。高解像度のカメラやロボットアームのほか、火星表面の物質を化学的に分析する装置なども搭載。現在および過去の火星の温度環境や水の有無、有機物など生命に関する痕跡を示す物質などについて調査を進める。
キュリオシティの名は全米の児童・生徒から公募され、カンザス州の少女が提案したもので「好奇心」の意。これまでに火星に送られた探査車のなかでは群を抜く大きさで、長さ3メートル、総重量は約900キログラム、小型トラクターほどのサイズ。大きな重量の探査機を火星表面に着陸させるために新しい降下システムが運用された。パラシュートやロケット噴射、スカイクレーンという降下装置からキュリオシティをつり下げて軟着陸させる方法などを組み合わせた複雑なシステムである。着陸地点は、かつては湖を形成していた可能性があると考えられているゲールクレーター
キュリオシティの走行速度は、自律航法では最大時速90メートル程度、2年の活動期間中に19キロメートル以上の距離を移動する予定。リアルタイムOSであるVxWorksによって制御され、岩盤掘削もできるロボットアームなどを装備。車体には17個のカメラを搭載して3D動画や顕微鏡画像を撮影、数メートル離れた場所から赤外線レーザーで土壌や岩の表面を蒸発させスペクトル分析を行う装置や、粉末サンプル中の鉱物の特定などを行うなどの多彩な実験設備を搭載。動力源として、プルトニウム原子核崩壊による熱エネルギーを取り出す原子力電池(RTG、Radioisotope Thermoelectric Generator)を用いる。このため、太陽電池のような夜間や季節による制約を受けることなく、長期にわたって安定した電力を得ることが可能である。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キュリオシティ」の意味・わかりやすい解説

キュリオシティ
きゅりおしてぃ
Curiosity

NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)が火星探査ミッションで用いる無人探査車(ローバー)の愛称。キュリオシティとは英語で「好奇心」を意味する。宇宙船マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL:Mars Science Laboratory)に装備されている。MSLは2011年11月26日にケープ・カナベラル基地よりアトラスⅤで打ち上げられ、2012年8月6日に火星に軟着陸した。キュリオシティは全長3メートル、幅2.7メートル、高さ2.2メートル、重量約900キログラム。2.2メートルのロボットアームを備え、6輪駆動で、動力は原子力電池を用い、10種類の観測装置を搭載している。火星上での生命活動の痕跡を探すことが目的で、火星表面の土と岩石をすくい取り、またはドリルで削りだし、分析装置を使って土壌内部の解析を行う。NASAは2018年6月7日、キュリオシティの探査によって、火星に有機分子があり、また、火星にあるメタンの量が季節によって変動していると発表した。

[編集部 2023年7月19日]


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