キンセンイシモチ(読み)きんせんいしもち(英語表記)southern orange-lined cardinal fish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンセンイシモチ」の意味・わかりやすい解説

キンセンイシモチ
きんせんいしもち / 金線石持
southern orange-lined cardinal fish
[学] Ostorhinchus properuptus

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科スジイシモチ族に属する海水魚。小笠原(おがさわら)諸島、神奈川県から南西諸島の沿岸、台湾南部、南シナ海、フィリピン、オーストラリア東岸、モルジブ諸島などインド洋・太平洋に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。吻(ふん)は丸みがある。目は吻長よりも著しく大きい。口は普通大で、上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下まで達する。上主上顎骨はない。上下両顎には犬歯状の歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状。鰓耙(さいは)は上枝に3本、下枝に14~15本。頭部と体は櫛鱗(しつりん)で覆われる。側線はよく発達し、側線有孔鱗数は24枚。背びれ胸びれ基底上方から始まり、2基で、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条。第1背びれの第3棘は第4棘より長い。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、その基底長は第2背びれ基底長とほぼ同長で、2棘8軟条からなる。胸びれは14軟条。腹びれは胸びれ起部下付近から始まる。尾びれの後縁は二叉(にさ)する。頭部と体側には5本の幅の広い黄色縦帯が走り、第1帯は目の上縁から、第2帯は目の上部から、第3帯は吻端から目を横切って、第4帯は上顎から目の下縁を通り、そして第5帯は下顎の後端から、それぞれ尾部に向かって伸びる。第2帯は第2背びれ下方で消失し、第3帯は尾びれの後端まで達しない。各縦帯間は銀白色。胸びれを除く各ひれは黄色。第2背びれと臀びれに白色の線がある。沿岸のサンゴ礁や岩礁域に小さい群れで生息するが、稚魚は港のなかにいる。産卵期には雌雄対(つい)で求愛行動をして、産卵し、雄が口内保育を行う。最大全長は6センチメートルほどにしかならない。

 スジイシモチ族は、魚類学者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らによる2014年(平成26)のDNAの分析結果から、スジイシモチ属のみに対して使われるようになった。本属には本種を含めて日本から26種が知られている。本種は体側の縦帯が橙黄(とうこう)色または淡褐色であること、第2帯が第2背びれ起部近くで消失することなどでスジオテンジクダイO. holotaeniaによく似るが、スジオテンジクダイでは第3縦帯は尾びれの後端まで達すること、第4帯と第5帯の間にある淡青色斑(はん)が斑点状であることなどで区別できる。

[尼岡邦夫 2022年1月21日]


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