クチキムシ(読み)くちきむし

改訂新版 世界大百科事典 「クチキムシ」の意味・わかりやすい解説

クチキムシ (朽木虫)
Allecula melanaria

甲虫目クチキムシ科の昆虫。北海道から九州まで分布し,成虫初夏のころから朽木の上や葉の上に見られる。危険を感ずるとすばやく走り去る。背面は黒褐色で光沢がある。触角は細長く,胸脚とともに赤褐色。上翅には点刻を含む条溝があり,黄褐色の毛をまばらに生ずる。体長約10mm。幼虫は朽木などの腐植物を食べるが,ときには昆虫の幼虫を捕食すると考えられる。幼虫は淡黄褐色で光沢がある。形は半円筒形で細長く,胸脚を有し,末端節は円錐形で尾突起を欠くが,肛門部が突出して尾脚となる。幼虫で越冬し,5月ごろ朽木の中などで蛹化(ようか)する。クチキムシ科Alleculidaeは世界から約1200種,日本からは約30種が知られている。成虫の脚のつめが櫛状の歯になっていることなどでゴミムシダマシ科から分けられているが,ゴミムシダマシ科に含める学者もいる。この特徴から英名comb-clawed beetle。成虫は枯木や朽木,キノコ樹木の花や葉に見られ,幼虫はおもに腐植物や菌類に見いだされる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クチキムシ」の意味・わかりやすい解説

クチキムシ
くちきむし / 朽木虫
[学] Allecula melanaria

昆虫綱甲虫目クチキムシ科に属する昆虫。日本各地に分布し、体長10ミリメートル前後。細長く黒褐色でかなり光沢があり、触角や脚(あし)などは赤褐色、上ばねには縦溝がある。朽ち木の皮下や落葉下などにおり、一年中みられる。

 クチキムシ科Alleculidaeは、世界各地に分布し、熱帯域に多く、1100種以上が知られ、日本には30種余が産する。体長4~20ミリメートル、細長い種や卵形の種もあるが、多少とも紡錘形ないし舟形が普通。触角は糸状、まれに櫛(くし)状。脚は細く、跗節(ふせつ)は5節で後肢だけ4節、つめには櫛状に歯がある。色彩は一般に単調で、多くは赤褐色ないし黒色、ときにキイロクチキムシCteniopinus hypocritaのように鮮黄色のものや黄赤色のものがある。オオクチキムシA. fuliginosaなどはクチキムシ同様に朽ち木や落葉下にいるが、アカバヒメクチキムシHymenalia rufipennisは樹葉上に、フナガタクチキムシIsomira oculataは花上にみられ、クロホシクチキムシPseudocistela haagi灯火にくる。

[中根猛彦]

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