クビワコウモリ(読み)くびわこうもり(英語表記)Japanese serotine bat

改訂新版 世界大百科事典 「クビワコウモリ」の意味・わかりやすい解説

クビワコウモリ (首輪蝙蝠)
brown bat
serotine

翼手目ヒナコウモリ科クビワコウモリ属Eptesicusに属する哺乳類の総称。首にかすかな淡色の横帯があるのでこの名がある。ユーラシア,アフリカ,オーストラリア,アラスカからアルゼンチンまで分布し,約35種があり,体長3.5~7.5cm,前腕長は2.8~5.5cmまで大きさはさまざまである。日本には北海道にキタクビワコウモリ(ヒメホリカワコウモリ)E.nilssoni parpusと,本州ニホンクビワコウモリ(クビワコウモリ)E.japonensisの2種がいる。日本における発見は近年で,ニホンクビワコウモリは北アルプスの山ろく,富士山ろく,秩父の山岳地帯から知られ,北海道のキタクビワコウモリは森林限界で捕獲され,どちらも森林にすむ種と思われる。日本にすむ種は中型で体長6cm前後,前腕長4cm前後。アブラコウモリに似るが,吻(ふん)が太く幅が広く,耳介も幅広く,先端がまるい。体毛の色は英名が示すとおりチョコレート色で首にこはく色の横帯がある。ヨーロッパのものは夏期に雌は繁殖集団をつくるが,雄は単独でいる。最高寿命6年以上。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クビワコウモリ」の意味・わかりやすい解説

クビワコウモリ
くびわこうもり / 頸輪蝙蝠
Japanese serotine bat
[学] Eptesicus japonensis

哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。日本特産種で、本州の中部以北に分布し、原生林に生息する。前腕長40ミリメートル、頭胴長63ミリメートル前後。耳介の基部から胸の前方にかけて体下面に黄土色の頸輪があるのでこの名がある。耳介の先が丸く、耳珠はキノコ状。体上面の毛色は黒褐色で、正中部は光沢がある淡黄土色。翼は幅が広い。比較的低空を飛びながら、小さな甲虫やガなどを捕食する。北アルプスの山麓(さんろく)地帯で発見されたもので、富士山の原生林には少なくない。北海道には、本種より尾が長く、毛色が光沢に富み、頭骨が幅広いキタクビワコウモリE. nilssoni parvusを産する。

吉行瑞子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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