日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クラフト(Adam Krafft (Kraft))
くらふと
Adam Krafft (Kraft)
(1445/60―1508/09)
ドイツの彫刻家。ニュルンベルク生まれと推定され、同地近郊のシュワーバハで没した。フィッシャーとともにゴシックからルネサンスへの様式転換期におけるドイツ彫刻を代表する。後期ゴシックの装飾的な彫刻から出発したが、1500年ごろイタリアの影響を受けることなく単純で造形性に富む様式に到達した。精神的表出力にあふれた活力ある石彫を特色とする。表現分野は墓碑が多く、ニュルンベルクの聖セバルド聖堂のシュライエルの墓碑(1490~92)が代表作。レリーフでは同市計量局の作例(1497)が名高く、建築装飾作品としては同市の聖ロレンツォ聖堂のサクラメンツハウス(1493~96)に人物と装飾の調和した作品群がある。そのなかの作者像は内面性をたたえた秀作である。
[野村太郎]