日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クルス(Ramón de la Cruz)
くるす
Ramón de la Cruz
(1731―1794)
スペインの笑劇作家(サイネテーロ)。マドリード出身、同地で没。笑劇(サイネテ)や軽喜歌劇(サルスエラ)など、純スペイン的小劇(ヘネロ・チコ)に活力を与えた功労者。外国劇の翻訳やバロック劇の改作を試みているうちに、幕間狂言(エントレメス)や笑劇など短い作品を書くようになり、その数は400を超える。『聖イシドロの野原』『おかんむりの栗売女(くりうりおんな)』『ともしびのファンダンゴ』などにみられるように、僧侶(そうりょ)、洒落者(しゃれもの)、伊達女(だておんな)、下町っ子など、さまざまな人物を登場させて民衆の生活を色鮮やかにとらえ、冗談、誇張、通俗語などを交えた生気のある用語でマドリードの風俗を風刺的に活写している。
[菅 愛子]