日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クルップ(Alfred Krupp)
くるっぷ
Alfred Krupp
(1812―1887)
ドイツの製鋼企業家。14歳で父フリードリヒ(1787―1826)から引き継いだエッセンの小鋳鋼場を、世界的重工業兵器企業に発展させ、クルップ家の5代にわたる事業を確立、エッセンをクルップの町としてルール重工業史上に巨歩を記した。父譲りの優れた鋳鋼技術のうえに発明を重ね(スプーン圧延機、継ぎ目なし車輪など)、おりから工業化のさなかに展開する鉄道業を基盤に、1840年代に企業の飛躍的拡大を達成。製品信用を重視する高品質高価格政策とともにプロイセン軍部に食い込み、制式砲に採用されたクルップ砲のプロイセン・オーストリア戦争、プロイセン・フランス戦争での効果により、兵器企業としての成長を確実にした。また製鋼技術ではもっとも早くベッセマー法を採用し、ジーメンス‐マルタン法の採用、採炭から最終製品まで一貫する「混合企業」の形成などルール重工業の方向を打ち出しつつ、独自の労働者政策や同族的企業組織などで特徴的な「クルップ経営」を樹立した。
[福応 健]