クロオオアリ(読み)くろおおあり

改訂新版 世界大百科事典 「クロオオアリ」の意味・わかりやすい解説

クロオオアリ (黒大蟻)
Camponotus japonicus

膜翅目アリ科の昆虫。日本産のアリの中ではもっとも大型の部類に属するヤマアリ亜科のアリで,働きアリの体長は7~13mm,ふつうのアリではそれぞれの役割により大きさや形態がはっきり違うが,一つの巣の中でもその中間型がしばしば現れる。体は全体が光沢のない黒色で,腹部は剛毛のため灰褐色に見える。北海道の中部から九州にまで分布し,大都市の市街地などを除き人家の周辺にもふつうに見られる種類で,国外ではシベリア東部,中国東北部,朝鮮半島などにも分布する。巣は日当りのよい比較的乾いた土地につくられ,地下1m以上の深さに達する。アブラムシの排出液や花のみつを集め,また昆虫などの小動物も食料とする。5月ころ,穏やかな好天の日の午後羽アリ婚姻飛行が行われるが,いくつかの県にまたがる広い範囲でいっせいに起こることが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロオオアリ」の意味・わかりやすい解説

クロオオアリ
くろおおあり / 黒大蟻
[学] Camponotus japonicus

昆虫綱膜翅(まくし)目アリ科に属する昆虫。日本各地および朝鮮半島、中国などに分布する。体長は働きアリで7~13ミリメートル、女王で17ミリメートルぐらい。体は黒色で、褐色の剛毛がある。もっとも普通にみられるアリの一種で、日当りのよい裸地や草地土中に巣をつくる。羽アリは秋に羽化するが、巣内で越冬し、翌年5月ごろに飛び出す。近縁種ムネアカオオアリは林地の朽ち木に、ケブカクロオオアリは山地帯草地の朽ち木に、営巣する。カラフトクロオオアリは亜高山帯に生息する。

[山内克典]


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百科事典マイペディア 「クロオオアリ」の意味・わかりやすい解説

クロオオアリ

膜翅(まくし)目アリ科の昆虫の1種。体長7〜13mm,黒色。日本全土,シベリアを経てヨーロッパ北アメリカなどに広く分布。日当りのよい乾燥地に営巣し,有翅虫(羽アリ)は5〜6月ころのむし暑い日の午後に飛び出す。
→関連項目アリ(蟻)

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世界大百科事典(旧版)内のクロオオアリの言及

【アリ(蟻)】より


[形態]
 ふつう雌アリがもっとも大型で,雄アリ,働きアリの順に小型になる。働きアリの体長が2~10mmくらいの種類が多いが,コツノアリでは1mm,クロオオアリ(イラスト,イラスト)の大型の個体で14mm,東南アジア産のギガスオオアリや南アメリカ産のコワハリアリには30mmに達するものがある。成虫の体は頭,胸,腹の3部に分かれている。…

【クロシジミ】より

…雌はカシワ,クヌギ,コナラなどに群がるクワナケクダアブラムシなどのアブラムシ類,ススキに発生するススキノアブラムシ,アキグミに発生するグミキジラミなどの群れの中に産卵する。孵化(ふか)した幼虫は,初めはこれらの昆虫の分泌物を食物として成長するが,夏の終りころアブラムシなどに群がるクロオオアリによってその巣内に運ばれ,ここでアリの口から吐き出される物質を口移しに与えられて育つ。アリは幼虫が分泌するみつをなめる。…

※「クロオオアリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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