クロムウェル(Thomas Cromwell)(読み)くろむうぇる(英語表記)Thomas Cromwell

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クロムウェル(Thomas Cromwell)
くろむうぇる
Thomas Cromwell
(1485ころ―1540)

イギリスの政治家。国王ヘンリー8世を助けてイングランド教会樹立に貢献した。貧家に生まれて諸所を放浪、イタリアにも暫時滞在し、傭兵(ようへい)の経験も積んだとされる。ウルジーに拾われて出世の手づるをつかみ、1523年には議会に出る。ウルジーの失脚後は王の注目を得ることに努めて成功、1530年に早くも側近の地位についた。1534年に王の秘書長官、1536年には玉璽尚書(ぎょくじしょうしょ)となり、その間国政を掌握して宗教改革の推進を図った。国内における教皇権力を否定して国王の政教両面に及ぶ至上権を確立するという方向は、彼の頭脳から出たとみてよい。1535年以降は修道院の解散に取り組み、みごとな成功を収めた。ドイツ諸侯との同盟を求めてクレーフェ公国の王女アンを国王にめあわせたが、このことからのちに王の不興を招き、反対派の策動もあって1540年7月に逮捕、7月処刑された。彼は君主専制の信奉者とみられやすいが、むしろ「議会における国王」体制の支持者ではないかとする新説も出ている。

[植村雅彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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