日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クローニン(James Watson Cronin)
くろーにん
James Watson Cronin
(1931―2016)
アメリカの物理学者。シカゴに生まれる。父はテキサスのサザン・メソジスト大学の語学の教授で、彼も同校を1951年に卒業した。シカゴ大学大学院に進み、実験核物理学を学び、1955年に博士号を取得した。ブルックヘブン国立研究所の研究員を経て、1958年にプリンストン大学の助教授に就任、1962年に準教授、1964年に教授に昇格した。1971年にはシカゴ大学教授となった。
高エネルギー物理学を専門に研究、1964年にプリンストン大学においてV・L・フィッチと共同でK中間子崩壊の実験を行った。そこで彼らは、中性K中間子の崩壊を観測し、CP保存の破れ(時間反転の対称性の破れ)を発見した。パリティ(P)は波動関数の対称性のことで、1956年にパリティ保存の破れは発見されていたが、荷電共役変換(C)との組合せによるCP保存は保たれていると考えられていた。この発見は当時の物理学界に大きな衝撃を与えたが、クローニンがフィッチとともに中性K中間子崩壊における基本的対称性の破れの発見により、ノーベル物理学賞を受賞したのは16年後の1980年であった。
[編集部 2018年7月20日]
[参照項目] |
| |