日本大百科全書(ニッポニカ) 「クローバー(マメ科)」の意味・わかりやすい解説
クローバー(マメ科)
くろーばー
clover
[学] Trifolium
マメ科(APG分類:マメ科)の多年草または一年草。和名ツメクサ(詰草)。シャジクソウ属の総称で、3小葉からなる複葉をもつのが特徴。葉は互生し、長い柄があり、その付け根から花茎を出す。花は小さな蝶形花(ちょうけいか)で、多数が球状に集まって開く。茎葉は栄養価が高く牧草として利用され、とくに根につく根粒菌は空気中の窒素を固定し土地を肥やすので、休耕畑などにも植えられる。おもなものにシロクローバー(シロツメクサ)、アカクローバー(ムラサキツメクサまたはアカツメクサ)、アルサイククローバー(タチオランダゲンゲ)、ストロベリークローバー(ツメクサダマシ)などがあるが、代表種はシロクローバーである。
[星川清親 2019年10月18日]
文化史
クローバーの語源は、ローマ神話の英雄ヘルクレス(ギリシア名ヘラクレス)が持っていたという三つのこぶのある棍棒(こんぼう)に由来する。つまり、クローバーの葉形がその棍棒の形と似ていたので、ラテン語で棍棒を意味するクラバclavaがクラブclubに転訛(てんか)し、さらにクローバーと変化した。トランプ札のクローバーの葉形をしたマークがクラブとよばれるのは、そのいきさつを物語る。
クローバーはアイルランドの国花であるが、これは、その均整のとれた3枚の小葉をカトリックの宗義の三位(さんみ)一体のシンボルと結び付けたからである。またヨーロッパでは、葉が荷造り用の詰め物に使われた。日本への渡来も、1846年(弘化3)、オランダから幕府に贈られたガラス製の花瓶や照明器具などの梱包(こんぽう)にされたクローバーの詰め物から種子が採種、播種(はしゅ)されて広がった。ツメクサの名は「詰め物の草」に基づく。その後、明治の初めに北海道へ牧草として本格的に導入された。アメリカのバーモント州の州花である。
[湯浅浩史 2019年10月18日]