クントの実験(読み)クントのじっけん

精選版 日本国語大辞典 「クントの実験」の意味・読み・例文・類語

クント の 実験(じっけん)

クントが行なった音速測定のための実験。長さ約一メートル、直径三~四センチメートルのガラス管(クント管)を水平に置き、その中にコルク砕片または、シダ胞子などの粉末を散布したものに、ピストンをつけた棒を挿入し、その棒に振動を与えて、粉末に生じる変化によって、ガラス管中の音速を測る。

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デジタル大辞泉 「クントの実験」の意味・読み・例文・類語

クント‐の‐じっけん【クントの実験】

クントが1866年に音速測定のために行った実験。先に板をつけた棒をピストンとしたガラス管で、管外の棒をこすると管内空気の振動による定常波が生じ、それを観測することによって振動数を求める。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クントの実験」の意味・わかりやすい解説

クントの実験
くんとのじっけん

気柱(管の中の柱状の空気)の共鳴現象を利用して、棒の縦振動の振動数や棒の中を伝わる縦波速度を測定する実験。1866年、ドイツの物理学者クントが初めて行ったのでこの名がある。のように、長さが1メートルぐらいのガラス管を水平に置き、管内にはコルクの細粉のような軽い粉末を一様にまいておく。一方の端は位置を調節することのできるコルク栓Aで密閉し、他方の端には金属棒またはガラス棒の先に取り付けた円板Bを差し込んでおく。金属棒は中央Mで固定されている。

 布あるいは革に松脂(まつやに)をつけて、棒のMからCまでの部分を強くこすると高い音を出す。音を出しながらAのコルク栓の位置を調節すると、棒の振動とガラス管内の気柱が共鳴して定常波が発生する。管内の粉末は、定常波の腹(振幅が極大になるところ)のところでもっとも激しく動くので、結局、定常波の節(振幅が極小となるところ)のところに集まって、等間隔の縞(しま)ができる。縞の平均の長さlを測定することにより、棒の振動数や、棒の中の波の速度、および棒のヤング率を測定できる。

石川光男


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改訂新版 世界大百科事典 「クントの実験」の意味・わかりやすい解説

クントの実験 (クントのじっけん)

固体・液体・気体内の音速の比較測定のために,ドイツの物理学者クントAugust Adolph Eduard Eberhard Kundt(1838-94)が1866年に行った実験。細長いガラス管の一端を,棒をとりつけた栓でふさぐ。管の中に乾燥した石松子ヒカゲノカズラの胞子)またはコルク粉末をまき,管の他端をピストンで閉じておく。棒をこすって縦振動を起こして,管の中に音を発生させる。ピストンを動かして気柱の長さを調整して共鳴状態にすると,粉が粒子速度極大(音圧極小)の位置を中心にして激しく動き,ひだ状の図形ができる。ひだの中心間隔はλ/2(λは音の波長)になるので,音の振動数fがわかれば,cfλの関係から音速cを求めることができる。その反対に音速cがわかっているときには,音の振動数ffc/λで求められる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クントの実験」の意味・わかりやすい解説

クントの実験
クントのじっけん
Kundt's experiment

棒の縦振動の振動数を測定する実験。 1866年に A.クントが考案したもの。長さ 1mほどのガラス管を水平に置き,一端をコルク栓で密封する。他端にもコルク栓を詰めるが,これには穴があけてあり,金属棒を通せるようになっている。ガラス管に入る金属棒の端に円板をつけ,ピストンの形にする。ガラス管の中には,おが屑などの細かい粉をまいておく。ガラス管の外に出ている金属棒の部分をしごくようにこすって縦振動を起すと,ガラス管の長さが適当であれば,棒の縦振動で生じた音波がコルク栓から反射して定在波を生じる。この結果,濃淡の模様ができ,波長 λ をはかることができる。音速を v ,振動数を f とすれば,vfλ という関係があるから,v が既知なら振動数 f が求められる。

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百科事典マイペディア 「クントの実験」の意味・わかりやすい解説

クントの実験【クントのじっけん】

ドイツの物理学者クントA.Kundt〔1838-1894〕が1866年に考案した音響実験。一端を閉じた水平なガラス管の中にコルク等の粉末を散布し,他端近くで金属棒をこすって縦振動を起こさせると,管内に伝わる音波が反射し定常波を生じ,粉末が振動の節(縦振動)または腹に集まる。その間隔から音波の波長がわかり,それから音波の速度がわかっていれば振動数が,振動数がわかっていれば速度が決まる。

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