グッドマン(Nelson Goodman)(読み)ぐっどまん(英語表記)Nelson Goodman

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

グッドマン(Nelson Goodman)
ぐっどまん
Nelson Goodman
(1906―1998)

アメリカの哲学者。マサチューセッツ州の生まれ。ハーバード大学で学び、ペンシルベニア大学ハーバード大学などで教えた。博士論文を準備しつつ美術ギャラリーを運営し、ハーバードで芸術研究のゼロ・プロジェクト、夏期ダンスセンターを創始するなど、芸術とのかかわりが深い。その哲学説の中核は記号学的な世界認識の学である。世界は事実として与えられているのでなく、われわれが構成する。その構成に際して用いられる記号体系の違いにより、また世界のなかのいかなる要素に注目して構成するかによって、いくつもの世界が現れるが、それらはすべて実在の世界とみなされる。この世界制作は言語記号によってなされるだけでなく、美術や音楽などによってもなされる。芸術は世界解釈の一つの形式にほかならず、その美的体験は世界の構成に変更をもたらすダイナミックな過程である。

佐々木健一 2015年10月20日]

『N・グッドマン著、雨宮民雄訳『事実・虚構・予言』(1987・勁草書房)』『ネルソン・グッドマン著、菅野盾樹・中村雅之訳『世界制作の方法』(1987・みすず書房/ちくま学芸文庫)』『N・グッドマン、C・Z・エルギン著、菅野盾樹訳『記号主義――哲学の新たな構想』(2001・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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