グラーフ(Regnier de Graaf)(読み)ぐらーふ(英語表記)Regnier de Graaf

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

グラーフ(Regnier de Graaf)
ぐらーふ
Regnier de Graaf
(1641―1673)

オランダの医師、解剖学者。ショーンホーベンSchoonhovenで生まれ、ユトレヒトライデンで医学を学び、デルフトで開業した。1664年に膵液(すいえき)の研究を発表、翌1665年学位を得た。この研究により、19世紀のフランスの生理学者C・ベルナールから実験生理学の創始者として高く評価された。大学の職を提示されたが断り、個人で研究した。「グラーフ濾胞(ろほう)」によりその名を知られているとおり、ヒトを含む多くの哺乳(ほにゅう)類の卵巣を解剖し、現在でもそのまま通用する詳細な図版をかいた。また、ウシの交尾前後、ウサギの妊娠全過程の卵巣の形態学的変化を観察し、生理機能を推論した。卵巣の黄体が分泌機能をもつという議論などは、その後1900年ごろになって初めて確認された現象である。濾胞全体を卵だと誤認はしたが、哺乳類卵は1827年に初めて発見されたのである。現代生殖生物学の基礎を築いた人といえる。

[川島誠一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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