グリーン(Julien Green)(読み)ぐりーん(英語表記)Julien Green

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

グリーン(Julien Green)
ぐりーん
Julien Green
(1900―1998)

フランスの小説家。パリで生まれ育つが、両親はアメリカ南部の出身で、そのアングロ・サクソン血統が彼をフランス文学においては異色の幻想的な作家にし、また、母親譲りのピューリタニズムは彼の人生と文学に決定的な影響を与えた。霊・肉の相克と信仰苦悶(くもん)、それが日記12巻、自伝4巻を含む彼の全作品に貫通する主題である。1916年カトリックに改宗。修道士を夢みるが、断念。リセ卒業後、軍務につく。19年、渡米しバージニア大学に留学。3年後パリに戻り、初めは短編および評論を書く。『フランスのカトリック信者に対するパンフレット』(1924)で、微温なカトリシズムを激しく攻撃。処女長編『モン・シネール』(1926)に次ぐ『アドリエンヌ・ムジュラ』(1927)でその地位を固める。以後、77年の『悪所』に至るまで12冊の長編、2冊の中・短編を書くが、すべての小説が日記と同じく作者内面の鏡である。『レビアタン』(1929)を頂点とするリアリズムに徹した作品群も、幻想への傾斜を強める中期の傑作『幻を追う人』(1934)や『真夜中』(1936)なども、みな悪夢のように作風は暗い。何度かの宗教的危機を乗り越えた後期の作品も絶望狂気を描きながら、しかし文体明澄になり、『モイラ』(1950)や『他者』(1971)のように、救いへのかすかな希望を暗示している。劇作3編もある。ほかにもエッセイ紀行文など多彩な活動で知られ、83年聖人伝『アシジの聖フランチェスコ』も有名。

[小佐井伸二]

『福永武彦他訳『ジュリアン・グリーン全集』全14巻(1979~83・人文書院)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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