ケラー(Helen Adams Keller)(読み)けらー(英語表記)Helen Adams Keller

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ケラー(Helen Adams Keller)
けらー
Helen Adams Keller
(1880―1968)

アメリカの盲聾唖(ろうあ)の著述家、社会福祉事業家。「三重苦の聖女」とよばれる。6月27日アラバマ州に生まれ、生後19か月で熱病のため、目・耳・口の機能を失った。7歳のときからサリバンAnne Sullivan Macy(1866―1936)によって教育を受け、サリバンの献身的指導と本人の不屈の闘志とにより障害を乗り越え、1904年ハーバード大学ラドクリフ・カレッジを優等で卒業。三重の障害をもって大学教育を終了した世界最初の人となった。彼女の努力と精神力は障害をもつ人々に希望を与え、その多彩な活動によって彼女は〈光の天使〉ともよばれた。1906年マサチューセッツ州盲人救済委員、1924年からはアメリカ盲人協会にもかかわった。アメリカ全土、海外各地に講演旅行を行い、障害をもつ人々の教育、援護のための基金を集め、福祉活動に大きな貢献をした。日本には1937年(昭和12)、1948年(昭和23)、1955年の三度にわたって訪れ、1948年には身体障害者福祉法(1949)の制定の動きに影響を与えた。この来日の記念事業としてヘレン・ケラー協会が創設されている。障害をもつ人々への友、その光ともなった生涯に対しフランスレジオン・ドヌール勲章(1952)、グラスゴー大学の法学博士号(1932)などが与えられた。著書に『私の生涯』(1902)、『暗闇(くらやみ)から』(1913)、『流れの中で――私の後半生』(1930)などがある。1968年6月1日死去。

[小倉襄二]

『川西進訳『ヘレン・ケラー自伝――私の青春時代』(1982・ぶどう社)』『岩橋武夫訳『わたしの生涯』(角川文庫)』『J・P・ラッシュ著、中村妙子訳『愛と光への旅――ヘレン・ケラーとアン・サリヴァン』(1983・新潮社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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