ケープ(服の一部)(読み)けーぷ(英語表記)cape

翻訳|cape

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケープ(服の一部)」の意味・わかりやすい解説

ケープ(服の一部)
けーぷ
cape

ベル形の、袖(そで)のない緩やかな外衣、あるいは首から肩を覆うように垂れ下がった、服の一部。ラテン語の頭を意味するcaputに由来する語。日本語の合羽(かっぱ)はポルトガル語のcàpa当て字

 ケープはすでに紀元前3000年ごろのバビロニア浮彫りの婦人像にみることができる。楕円(だえん)形の布の中央をくりぬいただけのものや、長方形の布を両肩に掛けて前で結んだり両肩ではいだものがあり、上流階級の婦人が、薄い亜麻布などのものを装飾的に用いたものと思われる。

 15、16世紀には、円形でフードのない男子用のスペイン式ケープが用いられた。裏や縁(ふち)に毛皮をあしらった豪華なもので、長さもいろいろあった。このケープは17世紀に男子の盛装の外衣として用いられた。ルイ13世時代のものは正円で膝上(ひざうえ)までの短いものであった。このころの女子の冬の外衣として、大形のパニエの上にケープ式コートが着用された。フリルやレース飾りや毛皮の縁どりのあるビロード製、あるいはレース製のもので、大形のものには左右に手出し口(ぐち)がついていた。1730年代に、西欧の男性の間でコートの上に(ビロードの)ケープを羽織ることが流行した。1830年代にはケープは防寒用衣服となるが、このころケープ式の外衣、マンテイラが出現して長い間流行した。以後、ケープは装飾的色彩の濃い衣服として残っている。

 日本では、1903年(明治36)の太陽舍刊『洋服裁縫教科書』に「ケエプスは其(その)形状すべて此廻(このまわし)(三分(さんぶ)廻し、半円(はんまる)廻し、イスパニア廻しなど)と同一なるが故に」との記述があるが、当時は「マント」のほうに押されて、「ケープ」という語はあまり用いられなかった。

 ケープには、使用目的、構成、形態、人名地名などを名に冠した種々のものがある。スポーティング・ケープ、ハーフサーキュラー・ケープ、ギャザード・ケープ、パラティン、アルスター・ケープなどがその例である。現在のケープは、主として婦人と子供の防寒および装飾用であり、ケープを組み合わせたケープ・ドレス、ケープのついたケープ・コート、ケープ風のケープ・カラーもある。

[田村芳子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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