コウタケ(読み)こうたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウタケ」の意味・わかりやすい解説

コウタケ
こうたけ / 革茸
皮茸
[学] Sarcodon aspratus (Berk.) S. Ito

担子菌類、サルノコシカケ目イボタケ科の食用キノコ。高さ10~20センチメートル。傘は径7~15センチメートル、漏斗(ろうと)形で、中央は茎の内部まで深くくぼみ、全形はらっぱに似る。初めはやや桃色を帯びた淡褐色、のち暗褐色、乾くと黒くなる。表面には、跳ね返った大形の鱗片(りんぺん)を帯び、裏には無数の針を密生する。和名は、野獣毛皮を連想してつけられたものである。秋、雑木林の地上に列をつくって群生する。乾くと強い芳香を放つ。新鮮なもので、こうたけ飯を炊くほか、乾燥して保存し、野菜と煮て食べる。煮ると黒い汁が出るが、香り高く、味もよく、きわめて珍重される。

 コウタケは日本特産種であるが、近縁種シシタケS. imbricatus (Fr.) Karst.がある。これは欧米にも分布しており、日本でもシシタケのほうが多い。シシタケはコウタケよりも大きく、径20~30センチメートルにもなり、傘のくぼみは浅く、鱗片は厚く、大きい。味にはすこし苦味があり、あくが強い。両種は、典型的なものでは区別がむずかしくないが、混同される場合が多い。

[今関六也]

 なまのときは香気は少ないが、乾燥すると香りが強くなる。よく乾かして缶などに密封しておくと、香りが長く失われず保存することができる。よくあくを抜いてから、煮物や和(あ)え物、てんぷらなど、種々の料理に用いる。とくに精進料理には欠かせないもので、通常甘く煮て食べる。とくに関西方面で好んで賞味され、比較的高価に取引される。

[星川清親]


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改訂新版 世界大百科事典 「コウタケ」の意味・わかりやすい解説

コウタケ (皮茸)
Sarcodon aspratus(Berk.)S.Ito

担子菌類イボタケ科のキノコ。かさの裏に剛毛状の針が密生しているのを野獣の毛皮と連想してカワタケ(皮茸)と名づけられ,それがなまってコウタケとなった。香茸はシイタケにあてられた名で本種を指すものではない。かさの径10~25cm,深い漏斗状で中央部には茎の根元まで達する深いくぼみがある。表面は淡紅褐色で濃色の大きなささくれがある。かさの裏面の針は0.5~1.2cm,灰白色のち暗褐色。胞子は類球形でいぼ状の突起がある。特有の香気があるので精進料理につかわれていた。一度ゆでこぼしてから料理するのがこつ。本種をシシタケS.imbricatus(Fr.)Karst.と同種とする説もある。
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栄養・生化学辞典 「コウタケ」の解説

コウタケ

 [Sarcodon aspratus].イボタケ目イボタケ科コウタケ属の食用キノコ.

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世界大百科事典(旧版)内のコウタケの言及

【キノコ(菌∥蕈∥茸)】より

…キノコがもつ独特の風味は日本人の心をとらえ,また健康を支えた。自然のもつ風味と季節感をたっとぶ日本料理では香り高いマツタケ,シイタケ,コウタケなどの風味をこよなく愛した。そして茸狩りを楽しんだ。…

【ハリタケ(針茸)】より

…イボタケ科にはクロハリタケPhellodon niger (Fr.) Karst.,チャハリタケHydnellum zonatum (Fr.) Karst.のようにハリタケの名がつけられるものが多い。多くは地上生だが革質で食用にはならないが,肉質で香りの高いコウタケは食菌として名高い。【今関 六也】。…

※「コウタケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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