日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
コズロフ(Ivan Ivanovich Kozlov)
こずろふ
Иван Иванович Козлов/Ivan Ivanovich Kozlov
(1779―1840)
ロシアの詩人、翻訳家。零落した名門貴族の家に生まれる。近衛(このえ)連隊に勤務していたが、37歳のとき、病魔に足の自由を奪われた。ついで視力を失い始め、1821年、42歳にして失明した。この不幸がコズロフを社交界の花形から転じて詩人としての才能に目覚めさせるきっかけとなった。出世作は、若い修道僧が非運の身の上を告白する叙事詩『修道僧』(1825)で、作者自身の境遇を作中の主人公に仮託した悲痛な物語は多くの読者を得た。ほかに宗教的な人類愛と悲哀に満ちた叙事詩『ドルゴルーキー公爵夫人』(1828)、『馬鹿(ばか)な女』(1830)のほか、西欧詩人の翻訳も多い。
[島田 陽]