コノハムシ(読み)このはむし(英語表記)leaf-insects

改訂新版 世界大百科事典 「コノハムシ」の意味・わかりやすい解説

コノハムシ (木の葉虫)
leaf insect

ナナフシ目コノハムシ科Phylliidaeに属する昆虫総称。この仲間の多くは体が扁平で幅広く,緑色で,しかも背中に置かれた2枚の前翅が1枚の木の葉に見え,全体としてもよくできた木の葉に見えるのでこの名がある。一般のナナフシ類棒状になって,木の小枝を模しているのと対照的である。体長は70mm内外。脚や腹部には,しばしば葉片をつけることがある。触角は雌では非常に短いが,雄は長い。また前翅は,雌では木の葉状に発達するが,雄ではたいへん短い。後翅は逆の傾向を示し,雌ではまったく欠くこともある。卵も植物の種子状をしている。これは外敵に対してほかに何の武器ももたないこの虫の防衛手段と考えられる。日本にはいないが,熱帯アジア,インド,ニューギニア島,アフリカなどに分布している。動作はゆっくりしており,成虫幼虫とも木の葉を食べる。種類はそれほど多くはなく,スリランカ産のPhyllium pulchrifoliumなどが代表種である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コノハムシ」の意味・わかりやすい解説

コノハムシ
このはむし / 木葉虫
leaf-insects

昆虫綱ナナフシ目コノハムシ科の昆虫の総称、またはそのなかの1種。コノハムシ科Phylliidaeの昆虫は、体長6~8センチメートルで、いずれも黄緑色ないし緑色をしており、頭部や胸部はナナフシ類の特徴を残すものの、腹部は背腹に扁平(へんぺい)で、横に幅広くなっている。雄の前翅(ぜんし)は小さく、後翅のみが畳まれて正中線に沿って腹背に置かれるのみであるが、雌の腹部背面に置かれた2枚の前翅は、体の正中線で左右相接し、ちょうど1枚の木の葉を思わせ、翅脈葉脈を模した形になっている。コノハムシの名はこの前翅の形状に基づいている。各脚(あし)は短く、腿節(たいせつ)には大きい装飾葉片をつける。実際にこの虫が植物葉上にいると木の葉と紛らわしく、隠れ擬態の効果のあることが示される。卵も植物の種子状で、地面に落ちるとみつけにくい。主として東アジアの熱帯に分布しており、パラオ諸島やニューギニア島、スリランカなどにすんでいるが、スリランカのコノハムシPhyllium siccifoliumが代表種。日本にはいない。

[山崎柄根]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コノハムシ」の意味・わかりやすい解説

コノハムシ
Phylliidae; leaf insect

ナナフシ目コノハムシ科に属する昆虫の総称。雌が木の葉形の昆虫のなかでも最も木の葉に似ているので有名。特に腹背においた2枚の前翅がつくる1枚の葉の形はみごとである。体長 60~80mm。体色は全体に緑色。雌は触角が短く,頭部,胸部は小さいが,腹部は大きく扁平で幅広い。後翅はなく,肢部の,特に腿節にはひれ状の飾りがつく。雄は触角が長く,体はそれほど幅広くならない。前翅は短く,後翅のほうが発達している。卵は植物の種子状。東洋の熱帯を中心に分布し,マレー半島やボルネオ産のコノハムシ Phyllium pulchrifolium,ホンコノハムシ P.siccifoliumなどが有名。 (→ナナフシ類 )

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百科事典マイペディア 「コノハムシ」の意味・わかりやすい解説

コノハムシ

ナナフシ目コノハムシ科の1種。雄50mm,雌70mm内外,緑色。扁平で,広葉樹の葉によく似ていて,保護色の好例として有名。スリランカ,南インド〜フィリピン,パラオ諸島に分布。この科の種類はインド〜ニューギニアの熱帯地方にかなり知られる。日本には沖縄にコブナナフシが分布する。

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