コミサルジェフスカヤ(英語表記)Vera Fyodrovna Komissarzhevskaya

改訂新版 世界大百科事典 「コミサルジェフスカヤ」の意味・わかりやすい解説

コミサルジェフスカヤ
Vera Fyodrovna Komissarzhevskaya
生没年:1864-1910

ロシア女優。オペラ歌手を父に,恵まれた芸術的環境に育ち,スタニスラフスキーの下で演劇修業。各地の劇場へ出演の後,1896年ペテルブルグ帝室アレクサンドリンスキー劇場にデビュー。チェーホフの《かもめ初演ニーナその他の役で人気女優となるが,帝室劇場の保守性に反発し,1902年に退団巡業で金を工面し,04年にコミサルジェフスカヤ劇場を創設。官憲の監視下にあるゴーリキーの《別荘人種》(1904),《太陽の子どもたち》(1905)を上演・主演したり,新進気鋭メイエルホリドを招き,象徴主義演劇《ヘッダ・ガブラー》《修道女ベアトリーチェ》(1906)その他に主演もするが,彼の極端な反写実演劇に同調できず手を切る。以後アメリカ公演地方巡業を続け,時代にこたえ,魂に訴える演劇づくりを模索したが,道半ばにして巡業地タシケントで天然痘のため死去した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コミサルジェフスカヤ」の意味・わかりやすい解説

コミサルジェフスカヤ
Komissarzhevskaya, Vera Fëdorovna

[生]1864.11.8. ペテルブルグ
[没]1910.2.23. タシケント
ロシアの女優。著名なオペラ歌手フョードル・ペトロービッチ (1838~1905) の娘で,イギリスで活躍した演出家 T.コミサルジェフスキーの姉。 1891年デビュー,96年アレクサンドリンスキー劇場に加わり,『かもめ』のニーナなどを演じたが,宮廷劇場の空気にあきたらず 1902年退団,2年間の巡業ののちペテルブルグにコミサルジェフスカヤ劇場を開設 (04) 。ゴーリキー,チェーホフなどの作品を繊細な心理描写によって上演し,注目すべき芸術活動を行なったが,その後メーテルランクやソログーブらの象徴主義へ深い関心を示すようになった。巡業中に客死。女優としては『ファウスト』のマルガレーテやイプセンノラヘッダ・ガーブラーなどを得意とした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コミサルジェフスカヤ」の意味・わかりやすい解説

コミサルジェフスカヤ
こみさるじぇふすかや
Вера Фёдоровна Комиссаржевская/Vera Fyodorovna Komissarzhevskaya
(1864―1910)

ロシアの女優。テノール歌手フョードル・ペトロービチ・コミサルジェフスキー(1838―1905)の娘。ペテルブルグ生まれ。1890年から91年までスタニスラフスキーの芸術文学協会の公演に加わり、96年に帝室アレクサンドリンスキー劇場に招かれ、チェーホフ作『かもめ』のニーナ役で有名になる。1902年同劇場を去って、04年ペテルブルグにコミサルジェフスカヤ劇場をつくり、メイエルホリドら若手演出家に活躍の場を与えた。ほかに『人形の家』のノラなど多くの当り役がある。

[中本信幸]

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